私と悪友の話~読書感想文『浪費図鑑』『悪友vol.1』~


 

 

「正直追い課金すれば出るじゃんって思ったけど、そういう考えはよくないね」
飲みの席で、「FGOで爆死する女」を読んだ感想を彼女はそう言った。*1
 彼女と私は悪友だ。
 
 
 

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昔、別の2.5次元舞台にはまっている人にこの公演いくつ入っているの? と聞かれ、正直に答えたことがある。多い数ではなかったし、上には上がいることをよく知っていたので深く考えていなかった。しかしその人は引いた。引くなら聞くんじゃねえよと反射的に思ってしまったが彼女が悪いわけでない。いやでも引かないでほしかった、せめて。
一時期、趣味にお金をいくら掛けるのが正常なのだろうと悩み、インターネットに答えを求めたところ、「収入の10%はキケン!」と書かれていたときは軽く切れてから深く考えることをやめた。
 この本を読めばその答えが分かるかと思ったが、そんなこともなかった。むしろ世の中にお金をかけられるジャンルの多さに驚いたし、それぞれの独特な文化も存在していた。
 

『浪費図鑑』ではトップバッター、『悪友vol.1』にも掲載されている「あんスタで浪費する女」はめちゃくちゃ面白かった。私はソシャゲ問わずゲームをプレイするのが苦手なのであんスタも数ヶ月が限界だったのだが、そもそもゲームとしては楽しくないとばっさり切った上で魅力を語る清々しさ。課金マウンティングはしんどい。でもそれ以上がある。
若手俳優で浪費する女」もときめきを感じてしまった。自分が一番近いジャンルだからなのかもしれない。この送ったプレゼントを着た着ない話はよく目にする。若手俳優のブログには誰のプレゼントかなんて書いてない。でも私だけには分かる。酔おうと想えばいくらでも酔えるその感覚に初めて羨ましさを感じた。よく目にするからこそ付きまとうネガティブなものを知っているんだけどこの文章にはそれが全くない。ドラマみたいだ。
「EXOで浪費する女」EXOは名前だけ知っていた。K-POPは自分が知る限りほかのアイドル文化とはまた違う熱のイメージがあり、かける金額とその危うさはすごい。というかイメージしてるK-POP文化とそのファンそのままではあったがさらに大盛りでこられた感じ。ラストで語っている『「事件」が起きないと物語はつまらないのだ』のエネルギーは強烈だ。世の中にはストレスなく消費したい人とどうしても消費する行為にストレスすらも伴いたい人間がいるのだが、彼女は後者で、それはそのまま力強い文章になっていた。
 以上の3つは親近感を持って読んでいたが、「占いで浪費する女」はまた別の面白さだった。元になった文章を読んだというか、書いている人物に粗方の見当はついていたが、元の文章にはここまで細かな金額が書いてなかった。もともと興味があったとはいえ「ネタ作りに」というノリで出来るのか? しかし、実はこの2冊を読んで私が一番影響されたのはこの占いというジャンルだ。失恋した私は今しかないなと占いに行ったし、なんなら今は占うほうの勉強している。彼女は「必要経費」であり純粋な「エンタメ」でもあったと語っているが本当にそうだ。人生でショックな出来事があったとき他人が自分の話をきちんと聞いてくれて、しかもアドバイスまでくれる占いは本当にめちゃくちゃ医療。保険適用してほしい。しかも人に笑って話せるんで最高だった。つらくて心療内科に行くか考えた時期でもあったが近場は平日しかやってないし、やはり勇気もいる。この文章を読んでいたのでとりあえず先に占いへ行こう、心療内科はそのあとでいいやと思えたし、気をつければそんなに金かからない。その上楽しい!ってノリで友人に占いを勧めたが「絶対にハマるからやめとく」と言われた。絶対に壺を買わない人間はいないが、高確率で壺を買う行動に出る人間はいる。大事なリスクマネジメントだ。
「触ってほしい一心で浪費する女」今までは対象物がありそれをお金をかけていた人の話だが、彼女は先に欲望(文字通り触ってほしい)はあるが、叶える手段が分からないので論理的に、冷静に模索するところからスタートする。紆余曲折を経て、コスパのよく(いいのか?)欲望を叶えられる一番近い現実的な手段を発見する。しかも欲望が欲望なので定期的に通う。浪費図鑑第1章のラストにぴったりだ。もしかしたら今後、まだ私が気付いていない、叶えたい欲望が明確に生まれたときそこに寄り添って探し出す道もあるんだと思える、素敵な文章だった。
 
様々なケースを読みながら、私は自分が思っていたより能動的に自分の欲望を叶える人の話が好きなんだなと思った。母がジャニヲタで、溢れる多幸感をずっと見てきたからかもしれない。余談だが母は近藤真彦堂本光一松本潤、伊野尾革命のときに伊野尾くんに降りるかと思われたが、結局光一くんに戻り、Endless SHOCK*2の2階最前なら〇万まで出せるわと言われたこともある。カエルの子はカエルだ。ジャニヲタの前はシャ乱Q長州力吉田拓郎にハマっていた時期もあるらしいし、たぶんまだいると思う。
 
巻末にはアンケート結果と対談が載っているが、『悪友』はひえ~!と言いたくなる、ないしょの~という題にふさわしいもの、『浪費図鑑』は好きなことにお金をかけることって素晴らしいな…と思えるものと対照的だった。でもこの2つは表裏一体だ。好きなジャンルに影響された職に就いている人もいっぱい知っているし、好きな漫画のオンリーイベントを借金してまで主催した友人もいる。アンケートも自分が今後使う金額についての参考になるかと思ったが、いざ読んでみるとこれだけあるジャンルの平均値を知ったところでそこに合わせられるわけでもない。でも5人に1人は貯金なしというのは学びになりました。意外と多いね、貯金している人。
昔はテニミュに何公演入るのが一番楽しめるんだろうと考えたこともあったが、最近はまじで始まらなきゃ分からないし始まっても分からないなと思えるようになってきた。ある程度同じジャンルにいると分からないことが分かるようになる。
 

趣味に掛けた金額の話をしないのは大人であるという理由もあるが、なんというか、ただ面倒くさい。あまりお金を掛けない人からは「そんなにお金使ってて大丈夫?」と言われる可能性があるので金額が連想できてしまう話は気軽にしない。心から善意の言葉であるなら余計。自分がよく分かってる。だからって同ジャンルの人とも気軽に話せるわけではない。お金を使ったという話はそのまま「使った金額マウンティング」に巻き込まれ、赤信号みんなで渡れれば怖くないと下手すれば身の丈に合わない金額を使いすぎてしまったり、逆に「そんなにお金を使えないわマウンティング」に巻き込まれることもある。これはもっと最悪だ。そういうものと板挟みになることはただひたすらに面倒くさい。
冒頭に書いた悪友とは長い友人だが、自分が使った金額やクレジットカード等の話をするようになったのは最近だ。ある日、実はさあ、なんて話し始めたら彼女は一切の否定もなく「分かるわ」の一言で済ませたときの喜びは尋常でなかった。
 
『浪費図鑑』の感想を2人で語る最中、前述した「そういう考えは良くないね」という彼女のセリフの重さったらなかった。彼女もFGO推しを引くためかなりの額を課金した。その額を知っている私も「追い課金すれば」という感情は一瞬、確かに巡った。でも他人が掛けた金額に口を出しはじめたら、今度は自分ががんじがらめになってしまう。みんなどこかでこれ以上は使うのはやめようと諦める額がある。それは人それぞれだ。だからそんなネガティブなものは持ち込まない。私は私の好きを買う。


彼女とは掛けたお金のことを全く隠さず一緒に酒を飲む。これ買おうか迷ってるの、なんて話を始めたら私に話したってことは背中押されんの待ってるんでしょ?と勢いよく押す。私たちは否定しない。私たちを肯定できるのはやっぱり私たちだけで、ひたすら多くの「好き」について語る。

だから私と彼女は悪友だ。*3*4
 
 
 
 
 

*1:FGOで爆死する女 | 青柳美帆子 | note

*2:毎年行われている光一くん主演の舞台。光一くんがフライングして2階に着地するパフォーマンスがある

*3:悪友「このガウェインには(6桁)円の価値があります」と携帯の画面を見せられた。

*4:自分の浪費話を書く前に力尽きたので追記するかも