アイドル短歌 を本にしたよ前編~裏話~

 

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過去に詠んだアイドル短歌をまとめて本にしてみました。
備忘録として、前編は今回作った本を中心に裏話、後編は次回に使えそうな話でまとめます。

ちなみに、発行の理由は壮大な暇つぶしです。新型コロナウイルスが蔓延し予定してたコンサート・舞台が中止となってしまい暇になってしまったので。最初の緊急事態宣言のとき(2020年3月)に出そうかな~と考え、2回目の緊急事態宣言(2021年1月)に入稿です。長い。慣れれば1カ月で済むような作業を約1年掛けちゃいました。春に考えるもまとまらず、夏はアイデアのアンテナを張りつつ制作せず、ほとんどの作業は秋にやって、冬に詰めて入稿という流れ。

 

 

 

タイトル『3回言えば永遠になる』について

自作の短歌「強く射て その星の尾は伸びていく 3回言えば永遠になる」より。

 なぜ、いつこのタイトルになったのか本当に謎(笑)。でも本を作るにあたり、このタイトルに助けられることが多かったです。流れ星の短歌なんですが、意味や意図がよく分からないですよね。私ですらこの短歌の意味は何度か変わっています。なので解説しないし好きに解釈してほしい。


テーマ ――― 星、祈り、願い

 作りながら決まった。最初に決めるべきだった。なんだったら出来上がってからこのテーマに気づいたかもしれない。
 短歌本の中に言語化未満のなにか(詩のようなもの)を入れようか迷ったんですけど要素が多すぎるので、あとがきを利用して言語化未満を入れました。テーマに通じる、星(アイドル自身や好きだと思う気持ち)はここにある。星(アイドルやファンを照らすもの)は見える…みたいな"星"のイメージを広げることができました。自己満。

 


カバー表紙

 最高です。迷った結果、デザイナーの方(星屑屋様)に依頼しました。宝石みたいで見た瞬間に興奮した。祈りや星のような部分もよく出ている。自分の短歌にイメージ画像がついたみたいで嬉しい。

 


装丁について

・A6(文庫本)サイズ、カバー付き
・ゴールドのスピン(栞紐)つき
・表紙(カバー下) ファーストヴィンテージ ブルーグレー172kg
・本文 淡クリームキンマリ72.5kg

 

 A6にする必要はなかった。四六判と悩んだんですけど印刷所が限られてしまい…。手に収まる感じ、本棚に綺麗に並べられることを考えるとこれで良かったかなと。ただ文庫本だと遊び紙がやりづらい(分厚い紙だとめくるとき引っかかる)、本文の用紙も薄い紙推奨なので、装丁の自由度は減ります。

 表紙(カバー下)は商業誌っぽさを出したく色付きに。ぎりぎりまで黄色系にするか迷ったけど、ブルーグレーの夜と朝の間くらいの色に落ち着きました。可愛い。今回はシンプルなカバー下になりましたが、次回カバー付き作るならもっと工夫したいな…驚いてほしい…

 スピンについては、カバー表紙のデザインをいただいた時点で「これにスピン付けたら良さげだな~」「可能ならやろう~」と思ってました。ちょうど印刷所のオプションが余ったので付けましたが、予想以上に好評で嬉しかった~!実はスピンは通販サイトやTwitterに出してない情報でした。手元に届いたとき「アッ!」ってなってほしくて。小さいサプライズ。

 


構成の話

 短歌、エッセイ、イラスト。やりたいことをやったらこうなった。

 イラストは章扉以外にファンレターのストーリーを入れました。手紙は米代恭さんの『あげくの果てのカノン』からインスピレーションを受けた。ほとんど感想をもらってないから私だけのロマンティシズムなのかも(笑)。ファンレターを書くという行為、うまく書けないこと、届くこと。短歌にできない感情だったので満足。自己満は大切。 

 章扉のイラストはほとんどCanvaを使っちゃった…自分で描いたのもあるけど、Canvaのイラストは便利!ただ見る人が見たらCanvaじゃんって絶対なるだろうから、次回は素材集を買うなり、もっとうまくやりたい。お気に入りは流れ星です。Procreateで描いたよ。

 

 エッセイ(と呼んでいいのか? ほかの呼び方が見つからない)は当初は掌編小説、つまり創作のアイドルとファンを描こうとしたのですが、慣れないことはなるもんじゃないですね!無が出来上がってしまったのでボツにしました。結局自分の短歌ブログに書いたものをそのまま短歌本に入れました。次回やるなら今度こそ掌編を書きたいな… 

また、COVID-19の章をつくることと、コロナにまつわる文章を入れることは、エッセイを入れるとなった時点で決めてました。きっかけがコロナだったし、コロナにまつわる自分の感情は残しておきたかったので。

 

 さらに余談ですが…短歌のみの本にするつもりはもともとありませんでした。複数の短歌集を参考にする中、エッセイやイラスト等は短歌が立体的になっていって魅力的だと思っていたので。その中で掌編小説>エッセイで最初に考えていたのは、詩歌における匿名性もまた魅力的だなと…ここからは言語化未満です…

 今回の短歌で特定のアイドルを詠んだ短歌でもグループ名とか名前は外してます。外すと意味がなくなってしまうようなものは短歌ごと外しました。
 例えば増田貴久という名前をつけて詠んだ短歌「重たくて少し暑くて不評なの それでも着たいのアイドルスーツ」は、増田さん(衣装を制作する+アイドル意識の高い人)じゃないと成り立たないし、名前の記載がないと面白みも減る。(重たくて暑いというのは増田さんが作った衣装に対するメンバーの感想という、実際にあった話です)
 逆に「見せられる夢があります見せられぬ夢もあります僕はアイドル」も増田貴久さんを詠んだ短歌だけど、これは増田さんを知らなくとも(プロアイドルと呼ばれるような人を好む人がいれば)共感できうる短歌だと思うので名前を外し短歌本に入れました。本人を知っていると面白い短歌は、本人を知らないとつまらなくなる。アイドル短歌は常に共感性を高める効果と、排他的になる部分が表裏一体です。

 アイドルの匿名性を高めれば好きな人を当てはめることができるので、NEWSファンじゃなくても楽しめるよう短歌の補足としての固有名詞はつけませんでした。(今回は外してしまった、このアイドルについて詠みました!っていうのは別の本にしたいな~)

 エッセイもできるだけ特定のアイドルに詳しくなくとも分かる内容のものを抜粋しました。例外は「あのね、僕は君が大好きなんですよ。」の文章。あとがき以外そのまま載せました。ブログ自体の評判が良かったのと、"君"が好きであるというどうしようもなさが、この本全体に利くこと、あとは単純に本に残したかった(笑)。満足。

 


短歌の話

 全てツイート済みのもので、書き下ろしはありません。ちなみに今後2冊目を出すか分からなかったので、今まで詠んだものはほとんど載せるくらいのつもりで作りました。


・短歌の推敲

 自分が詠んだクソ短歌は後述の並び替え段階で落としたので、採用した短歌はツイート時点のものをそのまま載せるつもりでしたが、『天才による凡人のための短歌教室』を偶然本屋で発見してしまい…内容は歌人になりたい人宛ての短歌入門本なんですけど、内容が最高で。最高すぎて。自分の短歌もこのままじゃいけないということで、直すことにしました。直せなくてこの段階でまた落とした短歌もあります。


例えば(×がツイートした推敲前、〇が本に載せた推敲後)

× 「目の前に君がいるから反射する」 見つめ合うとは見つめられてる

〇 君は月 愛を反射してしまう 見つめ合うとは見つめられてる

月のイメージで詠んだけど、"月"というワードがないと"反射"が利かないな~とか。

 

× 「ああどうかお許しくださいこの愛を」今のはあなたに言っていない

〇 「ああどうかお許しくださいこの愛を」おまえに言ったわけじゃないから

「あなた」を「お前」に。キレてるね!推敲後のほうが口に出したとき気持ちいい。


そのほか細かい直しのほうが多い。てにをはであったり、

× ありふれた歌を聞いてる ありふれた記憶に名前をつけるために

〇 ありふれた歌を聞いてる ありふれた記憶に香りをつけるために

たぶん歌を聞いても名前はつかない。であればこの記憶を彷彿とさせるようなせるような、呼び水のような何か…香りかな…という。いやこれ"呼び水"を直接使ったほうが良かったか?

………みたいなことをやってました。全体完成したあとぐらいに。

 


・短歌の並び替え

 今まで詠んだ短歌をすべて書き出し、イメージが似てる短歌をまとめました。

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頭が悪い同じ短歌を誤って入れるのが怖かったんだけど、頭が悪い。絶対もっといい方法がある。どうにもできないようなクソ短歌はこの時点で落としました。題詠や連歌も入れると量が増えてく一方なので基本落としてます。

それぞれ10~15首程度に分け、実際本に載る想定で並び替えたり、章で同じテーマの短歌のみにならないように似ている短歌はほかの章と交換してみたり…感覚です。

 ちなみに私は思春期にジャニーズにハマり、離れ、別のグループにまたハマって戻ってきたという経緯があるので、おしまいテーマの「愛の訃報」は3章目という早いほうに入れてみた。愛は死んでから本番。次の章である「どこまでいってもグレーだったら」はわりと暗い短歌を並べました。楽しい。

 

 

・短歌のデザイン

 基本的に1ページに2~3首を配置するのみ。たまに高さをばらばらにするとか、1首の行間をわざと空けてみたり。これも感覚です。

 分かりやすい例外であり、好評だったのが【検索】短歌ですね。

 ↓

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ツイートしたときからイメージがあったので、本にするタイミングでこの形にしました。やっとできた!嬉しい!

 

逆に今回は諸事情で断念したイメージはこれですね。供養。

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入稿~発送

 BOOTHのサービスを利用して通販のみで頒布しました。そろそろ入稿しなきゃな…と年末くらいに思い、詰めていったら出来上がってた。

 本の到着~自分で発送らへんはアドレナリン全開になった。「こんな本で本当に喜んでもらえるのか!?」「部数のことはマジで分からん!」「クソ虫でごめん…」みたいな感情がミキサーになってた。感想もらってもしばらく正気じゃいられなかった。2カ月たった今やっと冷静になったかな…

 

 

 

以上です! 

本づくり楽しかった~!知らないこと、考えたことがなかったものが多かったので世界の解像度が上がった。次回は箔押し前提のデザインしてみたいな…予算と相談だけど… ほかにも本当に「本」じゃなきゃダメなのかな?とも思いました。生活のどこに短歌があったら面白いかな?シールかな?冷蔵庫マグネットかな?ポストカードもありだな etc...

またアイドル短歌で面白いことができたらいいな~!!!

 

 

 

後編はこちら

 

whynot4696.hatenablog.com