遠く離れていても途切れることのない/NEWS LIVE TOUR『音楽』感想

例えば、演出の1つ1つの意味や概念を考えるのが好きだ。
見えた光景、歌詞、服、色、ダンス、それらを自分の中で繋いで、意味を見出す。
たとえNEWSが考えていることが全部分からなくても感じたことを自分の中に落として、たいせつにしてみたい。

 

今回は全然違った。
もちろん1つ1つを咀嚼したり、意味にしたりする。
でも頭を使うより、体が、五感が喜ぶのを感じていく。勝手に心が喜んでいくような感覚を、NEWS LIVE TOUR 『音楽』を通して知っていくのが、うれしかった。

 

・音が美味しい
NEWSのライブは生バンドがいい、今回は生バンドな気がするというのは実は毎年言っている。毎年確信のように思ってるけど、なかなかそうはいかない。でも音楽テーマなら絶対そうだって!とやはり例年と同じようなことを言って、それが叶って本当にうれしかった。

音を食べるいきものとして、あの会場に私たちはいた。
『TRIAD』で奏でられる一音一音、『KMK』のオケ、『pink moon』のピアノ、『agitato』のベース、『KAGUYA』につながる和風メロディー、今回真っ先に感じたことは「音のアソートパックだ!」だった。音源ママじゃない音が美味しい!

特に増田さんのエモーショナルな歌い方は時にゆっくり、時に早くいく。それに合わせる楽器隊が相乗効果となり歌の良さを見せてくれる。

小山さんの低音には聞き惚れた。『pink moon』や『走れメロスのように』では思わず目を閉じて聞いていた。視覚的に距離があっても、目を閉じれば近くなれるのが音なんだと初めて知る。低音だけじゃなく、声量もついた小山さんの歌声が服の裾が震わすのを感じて、恋のようにドキドキした。やっぱり私はいつまでたっても小山さんにドキドキしてしまう。

加藤さんの怒るような歌い方が好き。『JUNK』のセリフ「勝手に終わりにしてんじゃねーよ!」の痛み、『0,0,0,』の「失ったチャンスの数はthat's quite uncountable 数えたところで戻ってこねえ!」の力強さ。フォロワーに「加藤さんは怒り方が綺麗」って言われて「真理だ…」と思った。怒る加藤さんが好き。『未来へ』では、とある会場で、「嗚呼 叫べ」を叫ぶように歌った。口からマイクを遠く離しているのにはっきりと声が聞こえる。心が震える。

 

・カナリヤ

NEWSが3人になって、言いようもない不安を抱いて間もないころ、『カナリヤ』をテレビで見て「大丈夫だ」と思ったのを覚えている。私はNEWSが確かに、絶対に、好きだ。だからこれは私にとって「NEWS3人のはじまりの歌」のように思っていた。

『音楽』を通して、その認識は少しずつ変わっていった。増田さんしか見れないのだ。
鳥かごのような照明の中で増田さんが、ひとりうたう。コヤシゲが奥から、まるで福音のように、救いのように登場するのに、増田さんは飛べない。

幸せってすぐそこにあるようで
あると思うたび見つからないよな
それでいいと言い切れる強さが
僕にあったら
こんなことになってないのかな

初めて曲を聴いたとき、「そんな強さなくてもいい」と思った。あのときと感情がリンクする。
増田さんのダンスは、ある種の力強さがあるのに、ずっと苦しそうだ。飛ぼうと思ってジャンプするのに地に落ちてしまう光景をイメージする。サビは悲しそうで苦しそうで、痛々しい。本当にこんなところからまた飛べるのだろうかと、もういいよと声をかけたくなるほどで、全然増田さんから目を離せない。
だから映像の黄色い鳥が飛んでいるのを見て、泣きたくなる。
自分にとってずっと大切な曲だから、「カナリヤはいたんだよ」って誰に宛てるわけでもなく喚きたくなる。分かってよっていう感情と、分かられてたまるかって感情が同時に存在して、泣きたい。
あの増田さんの表現力ってなんなんだろう。私の知らない私を引き出してくるほど、魅了された。

 

 

カスタネット

オタクにこんなおもちゃ持たせるな!!!!!!!!!!!!!!!と途中まで思ってました。正直結構思ってた。ここはクラップターンでもない!うるせえ!!!!!!!というシーンはいくつかあり、周囲のファンと解釈違いも何度かありました(自分がマジョリティーだとは思ってないから、一意見です)
実際NEWSもコンサートに使うかは決めてないままグッズを作ったらしいので(おもしろすぎるだろ)、NEWS側も取り扱いに戸惑っていたのは面白かったです。最高なグループ。
初日ではあまりに鳴りすぎていて、ちょっと鳴らしすぎかも…曲のイメージとは合わないかも…とMCで言い、ファンの空気読みが発生したりと一連の流れが面白かったです。あとコンサート前に「NEWS!」コールの代わりにカスタネット鳴らしはじめたとき、ファンから息が漏れるような「ふふっ…」という声が出たことなど、カスタネット回りで起こったことはわりと楽しかったです。音を大きくするとカスタネット鳴らしが起こりにくくなるとか、もしかしたらNEWS側もずっと調整してたのかもしれないけど細かいことは分からない。でもオーラスでは解釈違いのカスタネットターンがなかったのが個人的にすごくうれしかった~!NEWS担好きぃ~!

・二色になるメンバーカラー
例えばメンバーカラー=衣装の色に使われるのが私はあまり好みではない、というか創造力が閉じていく嫌だったのでNEWSがメンカラ使わないのを大変好んでいたんだけど、二色になったのはさすがに最高過ぎん? 二色になっても受け入れられるだけの土壌がしっかりNEWSとNEWSファンにできていること、別に来年にはNEWS忘れてるかもな~くらいの温度感がわれわれにあることなど、醸成されたアイドルとファンを感じる。こうやって、どんどん可能性が広がる、創造力で遊んでくれるNEWSを見ていきたい。


・楽しいコンサートと、みんなの歌声

今回のコンサートはずっと笑顔でいられるコンサートだった。加藤さんがアリトロで回るとき、今までに見たことのない笑顔をしていた。そんな表情を私たちに見せてくれていいのかってくらい、リラックスの笑顔。STORYのときはずっと何か背負ってたのかなって、今ごろようやく理解した(【理解】というか、勝手に私が考えたものだけど)。

増田さんも「安心」のような心情を感じる。逆に小山さんはあんまり変わらなくて、すごくそれが今のNEWSだなって思う。あるとき増田さんが挨拶で「NEWSは20周年イヤーに…入ったんだよね?」といきなり小山さんのほうを向いて、マイクを持ってなかった小山さんが返答できないまま増田さんが正面向いて挨拶続けてて、コヤシゲが顔見合わせて笑っていたのもそう。今のNEWS。

以前、ブログでくるべきときはくると書いた。それは、NEWSが三人に成ったことを自分が受け入れるということ。過去をひとつも捨てないで、そういう姿を見せてくれるということ。

 

だからずっと笑ったまま終わるコンサートだと思っていた。オーラスで泣く、みたいなことはないかなって。オーラス前に募集された『Coda』のファン音源もサプライズではなかったし、やっぱり歌声っていいよね!くらいの感情で終われるものだと。

なのにファンの歌声を聞いた瞬間、私はすぐ涙した。
理由は全然なくて、今回のコンサートで「考えるより先に体が喜ぶ!」と感じたのと同じように、体が勝手に泣いた。何も分からないまま、愛おしくてたまらなくなる。
15周年のコンサート『Strawberry』ラストのオルゴールに合わせてファンが歌った光景を思い出した。ずっと変わらない。ありがとうとか大好きだとか伝えたくて、歌いたかった。本当に幸せだったあの時間や、U R not aloneを初めて歌ったこととか、いろんな時間が凝縮されて降ってくる。理由を考える隙も無く泣いていたら、モニターに抜かれた増田さんや小山さんも泣いてて、同じ気持ちなのかなと思った。

 

くしくも、最終公演の会場仙台では声出しが解禁された。
口のない星が、声を、歌を、音楽を手に入れる。偶然とはいえ、より深く松たか子さんの朗読が響いた。

やっぱり『音楽』はずっと幸せなコンサートだったと思う。
意味なんか軽々しく飛び越えてしまうくらい、ただ伝わってくる。

 

次会えるときは、歌いたい。NEWSに返したいし、一緒になりたい。2年という月日で完全に慣れていたはずの心を強くそう思わせてくれた、幸福なコンサートだった。