僕の心象はTWINKLE STAR 【アイドル短歌まとめ】

 


たわいない話がしたい 自転車に入れた卵が割れたこととか


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いい今に「なった」じゃなくて「した」のだと私が言うから あとは信じて

 

なんとなく、なんとなく4人以前のNEWSを避けてきたので初めて「LIVE! LIVE! LIVE! 」のDVDを見たときは驚いた。なにひとつ不足してないアイドルがいた。
NEWSのことをまったく詳しくなかった時に見たコヤシゲ夜会を思い出す。「4人になって良かったねって言われる」「すげえ言われる」「いや、6人でもできたし」彼らの言葉は当時の私には衝撃だった。「4人のNEWS」を愛しているのは彼らで、「俺らも4人になって良かったと思っている」と笑ってすらいそうだと思っていたからだ。
6人で歌ってパフォーマンスするNEWSはしっかりちゃんとアイドルだった。「絶対に今が最高のNEWS♡」という発想に、不思議なIFが登場する。そのIFでは4人でない形でNEWSが活動していた。きっと今とまた違った顔をしているだろう。道はあった。選ばれなかった道で、選ばなかった道なだけで。「できた」んだね。
手放しで過去のNEWSにキャーキャー言えるのは、私はこの未来にいて、今のNEWSがとびきり好きだからだ。そういう今を彼らは作ったのだ。

 

運命と奇跡を見分けられぬまま ここまできたね 明日も愛だね

 

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ボロボロで立ってる君が知らせてる 弱かったのは私だったの

 

12/31のコンサートENCOREで、私は紫の服に身を包み、「慶」という手作りのうちわを持っていた。その日まで小山さんに対して何度も胸を打つ瞬間が多かったから、どうしても1公演は紫の服を着たかった。それには飽き足らず紫のバンダナも付けた。とにかく小山さんが好きな人間がここにいると伝えたかった。

コンサートが終わったあと自分を恥じた。小山さんを好きだと伝えたかったのは確かにある。でもそれ以上に小山さんを好きだという人間をあの中に一人でも増やしたかったという自分に気づいた。そんなことする必要はないのに。ここには沢山小山さんが好きな人がいて、私の嘘っぱちなんか必要ないのに。
髪色が明るくなった小山さんはそれまで見た顔とは違う顔で笑った。30超えて、芸能界に人生半分以上いるのに、人ってまだ垢抜けられるんだと驚いた。
もう紫に身を包むことはないと思う。私が思うより小山さんはずっとずっと、正しく強い人だった。

 

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理解者でありたいという欲望を無神論者が罪と囁く

 

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両思いになるだけが恋じゃない 成し遂げるだけが愛ではない

 

突然だけどこの中に欲しいものある? とLINEで連絡がきた。送られてきた写真にはテレビ雑誌や装苑、そしてNEWSのCDが並んでいた。
彼女は学生時代の友人で、油絵では中間色を綺麗に使う子だった。密に連絡を取っているわけではないが共通の知り合いのおかげでなんとなくお互い近況を知っている、そんな仲だ。
そして彼女はNEWSのファンだった。それが現在進行形なのか過去形なのかはよく分からないし、彼女も語りたがらない。こじらせてるからとずっと前に言われた気もするけど語りたがらないことを聞く気にもならなかった。私はハマったものをどこでも言う性格をしているので、NEWSにハマったことも彼女と飲んでいるときに話に出た。その1ヶ月後にきた連絡だった。
いつか買うつもりでいたCDたちの写真を見てびっくりした。「DVDは残す予定なんだけど、これは捨てるつもりだから」とも続けてLINEがくる。飲み会中だった私は簡潔に「欲しい」と返し、今度会おうよとも伝えた。

結局彼女と予定を擦り合わせることがないまま「さくっと送ってしまいたい」という連絡が先にきて、郵送で荷物を受け取った。小さなダンボールは重く、開けると丁寧に梱包されたCD、数冊の雑誌と手紙が入っていた。彼女らしい、どこで見つけたんだろうと思うようなセンスのいいメガネのイラストが書かれた赤い封筒を開ける。洒落の聞いた季節の挨拶と「受け取ってくれてありがとう」という感謝の言葉のあとにこう続いた。
「なかなか手放す踏ん切りがつかなったので本当に助かります。ありがとう。」
ただ単に好きでなくなって、捨てるつもりだから良かったら程度のものできた荷物だと思っていたがどうやら違ったらしい。雑誌を確認すると1年以内のものも含まれていた。そのセレクトは絶妙で時期もバラバラな上、切り抜きもされていない保存状態のいいものだった。大量の本の中でも捨てられなかったものか、それともただこれを買っただけなのか。彼女の手に残っている雑誌もあるのかもしれない。
手放すきっかけが欲しい、踏ん切りをつける必要のある感情ってどんなものなのだろう。彼女は語りたがらないのできっと聞くことはない。

 

強く射て その星の尾は伸びてゆく 3回言えば永遠になる

 

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たったいま君に撃たれて倒れてるあの子のこころになりたかった

 

私はその日アリーナ席にいた。トロッコで来たアイドルはスタンド席のほうを向いたため、彼越しに観客席を見ることとなった。黄色地に黒字で彼の名前、横に「撃って」と書いてあるうちわが目に入った。遠くからでも見やすいそのデザインを彼は見つけ、ばん、と撃った。
彼女はその瞬間小さく跳ねて本当に撃たれたように沈んだ。顔は見えなかったけど隣にいた友人であろう子ととても喜んでいることが分かった。それは一瞬の出来事だった。いいな、彼女になりたい。

その少しあと、シゲがこちらへ来た。そのまま一番近くのリフターに乗る。リフターがあることは分かっていたけどまさかこの場所が彼の担当だと思わずひたすらに盛り上がる。リフターが上がる前、彼はファンを見下ろして手を振っていた。「ありがとう」とマイクを通さず口を動かすのを見て、この人が好きだなとあらためて思った。
彼は手を振りながら、観客席を見回すためにゆっくり時計回りに体を動かし、私を見た。持っていたうちわが目に入ったんだろう。私の目を見て、穏やかに微笑む。それは一瞬で、彼の視線はまた別の場所へ向かった。
目が合った。確かに私を見た。勘違いも自惚れもできない近さだった。びっくりして、嬉しいという感情を湧かせながら倒れるほどでもない自分にも驚いた。私がなりたかったのは彼女じゃない。倒れてしまうほどのこころだったのだ。

 

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愛される必要があるもの同士 ファンとアイドル小指結んだ

 

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愛称がむず痒くって「さん」付けた そういう類のプラトニック

NEWSやジャニーズにたいして詳しくないフォロワーさんがいる。彼女とは別ジャンルにいるころ仲良くなった子で、彼女の思想が好きで彼女も私の思想を好いてくれているようで、たまに話題が交差することもある。
「生きろ」のカップリンク「LVE」が発売されたとき、「信仰がなくては悪意に勝つことはできない」という歌詞にひととおり盛り上がる私にいいねを一つくれて、思わず歌詞を送りつけてしまった。「世界」のときも同じことをした。「あやめ」の映像がツイートで流れてきたときは、「○○さんはこれ絶対好きだと思う」とエアリプもした。ついでにこの人は加藤シゲアキさんといって「世界」を作った人と同じ人だよと今更な説明をすると、「知ってる!加藤さん」と返ってきた。私がしこたまTwitterで呼んでいる「シゲ」というあだ名ではなく、さん付けする彼女の距離感が心地よかった。


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好きだとかありがとうとか一文字になればいいのに うちわにするのに


加藤シゲアキの名前うちわがしっくりこない。
だったら顔うちわを持てよと思うけど、自分だけのなにかが欲しくて向き合うのにしっくりこない。
まず「シゲアキ」では長い。例えば
シゲ
アキ
と四文字をうちわに詰めて並べたら、え?縦読み?横読み?となってしまう。ゲキシア。頭文字を大きくしてみれば、今度は他の3文字が小さくなってしまう。別に視認性にこだわるなら黄色地に黒文字で「シ」を持てばいい。ただそれでは私が持ちたい「最高のうちわ」ではなくなってしまって、でもある程度見えやすいうちわが良くて、また悩む。
「成亮」、もしくは「成」にするのが一番いいとは思いながら、どこで言った「「成亮」といううちわがあるけど、現実に戻される」「日常を、例えば銀行とかを思い出す」いう昔の発言を思い出してしまう。もちろん今の彼ならたぶんそういったことは言わない。それでも、今の彼を「成亮」と呼んだことがないのではばかられた。

例えば小山さんなら「慶」の1文字がしっくりくる。手越くんは「祐」、増田さんなら「増」でもいいし「貴」でもいい。どちらもカッコイイ。一文字目でこの人の字だと思う。「シ」。間違いなく加藤シゲアキだなと思うけど作るのが難しい。なぜ離れた点が3つもあるんだ。ならば、今度は加藤の「加」でいいじゃないかと思うけれど、「加」は「シ」のとき同様にシンプルさゆえに難しくなるバランスの問題から離れられない。ていうか「加藤」って2文字で成立してない?
関ジャニなら横・信・忠・章・亮・隆。渋谷すばるってすごいな。「渋」でも「す」でもいい。「す」どこも離れていないし綺麗。
亀・竜・雄。えっ、KAT-TUNの並び最高だな。
健・風・聡・勝。マリ担にも同じ悩みはあるのだろうか、いやそれでも「マ」は離れていない。「シ」というカタカナは3つの点のバランスが難しすぎる。せめて「ゲシ」ならいいのにとすら思うほど、一文字目が特徴的で作りやすいって大事だ。離れていないことも。

こんな悩ましい名前なのに「加藤シゲアキ」と並べると感動する。こんなに綺麗な名前はない。名前うちわには向いてないけど。

 

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いつか死ぬけど生きてるし永遠を誓わないまま愛し合おうよ

 

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きらめいている星がありきらめくのをやめた星もまだ星のまま

 

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おしまいはトゥルーエンドと決まってる だからこれは美しい恋

 

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25の君の言葉が突き刺さる10年ほどの時差がある夜

 

「でもやっぱり25になるっていうと、え、もうって思うよ」と友人は言った。
18の時も20の時も23の時も誰かとそんな話をした気がする。そういう話題のとき私はどうしても他人事だった。誕生日が4月1日だからだ。日本の法律は面倒なことに4月2日から翌年の4月1日の子供を同学年として扱う。だから私は常に年下だった。
一年という長い猶予は、心の準備をするには十分だった。歳を重ねていくことにネガティブなものを持っていない私はずっと「ああ、やっとか」と思って24まできた。今年はそうじゃなかった。少なくともこの半年は。

確か9月の終わりの頃だった。2015年に発売されたNEWSの1万字インタビューを順番に読んでいた。いろんな重さがずっしりとのしかかったとき、ふとシゲが処女作を出したときの年齢を調べた。25の時だった。(この時、年数だけを計算したので気づかなかったけど、正確には24の時でした。24の時か…………)
あまりのショックに呆然とした。小説発売がそうだから書いてるのはもっと前だ。ずっと遠くにいたものが年齢という軸で私の隣へ来た。焦った。

誰かの何かになりたい。肩書きが欲しい、掴まれる何かが欲しい。めぐる欲を前にとにかくだらしない自分が嫌になり、生活と向き合うことをした。掃除・洗濯・料理・お金の管理・身だしなみ…一個一個書くと長くなるけど、そういったものと向き合い始めた。それ以上の欲を持たないように足元の問題から。
結果から言うとどれもさほど続いてない。ただ蓄積はされた。作れる料理は増えたし、洋服を選ぶのは以前よりずっと楽しくなった。
25になる。

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年を取れば取るほど楽になると聞いたことがある。たぶんこれは本当。知恵がつく。経験がある。いい意味で逃げ方もわかる。私は20代前半はとにかくもがいた。いろんなことが不安だった。
そして20代後半も結局そうなるのだろうと思っている。確信を持ったのはこの間のNEWS鑑賞会で25~27ごろのシゲを見てからだ。
2012年少プレもMステの「渚のお姉サマー」を披露したときも今とは全然違った顔つきをしたシゲがいた。NEWSが4人になり、小説を発売するタイミングで名前をカタカナにしたシゲアキ。成亮からシゲアキへの生まれ変わりが、強い自意識や斜に構えていた成亮から現在の彼になったのだと思っていたが違った。そんなことはなく、シゲアキになってからも彼はもがいていたんだな。なんだかほっとした。

鑑賞会の日の夜、ライナーノーツ ソロVer.が上がった。読んで、なんとなく理解したのは、彼は未来にいるということだ。24そこらで、もがく今の私の未来。もう彼は20代と同じもがき方はきっとしない。
そこに覚悟はもちろん必要だったと思うけど、正直「世界」を歌えるところまできた加藤シゲアキが羨ましい。飛び級してそっちにいきたいけど、年齢も言い訳にできないくらい何もない私は多分まだ足掻く。
足掻くことを諦められてないので諦めることは諦めた。そんな自分で良かったとも思う。「世界」はそういう自分に寄り添ってくれるから。