あのね、僕は君が大好きなんですよ。

あのね、僕は君が大好きなんですよ。
ねえ、自惚れてよ。

 

僕は君が大好きなんですよ。少しだけ信じて。

君がずっと昔からアイドルが大好きなことを、アイドルという職業で生きたいことを知ってます。上手くいかなくてもがいた時間があって、やっと小説を書いたときには「間に合わなくて」、それでも書き上げたことを、それでも出版にもっていったことを、それでもアイドルが続けられるか分からなかったことを、知っています。どんなふうに怖くて、どんなふうに苦しかったのだろうと、たまに僕は想像します。君の恐怖も苦しみも痛みも「分かる」なんて言えないけど、それでも想像します。そして少しだけほっとして勇気をもらうんです。怖くても苦しくても痛くても、人生は続くのだと、夢は少しくらい欠けたって続けられて広がってゆくことを君に教えてもらうんです。過去の君からもがくことを教えてもらうんです。ねえ、僕も怖いときがある。そういうとき君は僕の隣にいる。いい方向にいくかなんて分からないけど、もう少しだけ、と踏ん張る。怖いことが少しだけ怖くなくなる。ねえ、君がいるからだよ。

 


僕は君が大好きなんですよ。 深く考えないで、ただ頷いて。

君を好きになって、僕の世界は少しずつ広がっていってます。本、映画、テレビ、音楽。多趣味な君はたくさんを話して、僕は自分の知らない世界にひとつ触れます。今まで通り過ぎていただけのものが君を通して僕の内側に残るようになりました。君はポエトリーリーディングが好きですね。ラジオで紹介した見田村千晴さんの「銀河鉄道の夜」。不可思議/wonderboyさんのカバー曲で、最近よく聞きます。

たくさんの言いたいことがあるはずだったけど

今はありがとうとかまた会おうとかありふれたことが言いたい

君の言葉ではありませんが、そうやってひとつ僕の胸に落ちてきます。ポエトリーリーディングでいえば、君の曲に感じてたものがやっとひとつのジャンルとして繋がりました。僕にとって君は、本です。知らない言語で書かれているので読むのが結構大変です。君が落とすヒントを、本や映画や音楽や言葉を、拾って、君の本に書いてあることを翻訳してやっと意味になって僕に届きます。この世にいる人は全員そういう本かもしれませんが、僕がこんなに読みたくなった本は初めてです。

 

 

僕は君が大好きなんですよ。少しだけ覚えておいて。

昔の君をたまに見かけます。昔のDVDだったり雑誌だったり君の言葉を浴びます。本当にネガティブで自分を出そうとして出せない君をどうやって愛そうかと惑ってしまいます。不器用という言葉を思い浮かべる。僕が好きなエピソードに、NEWSがどうなるかわからない中、加藤さんの家に4人で集まったというものがあります。本当は大事な話をしたかったのに言い出せなくて、小山さんとふたりきりになったときに「話せなかったね」とつぶやいた。ただ、君はそれでも良かったとも言っていました。わいわいしている時間も大切だと。言葉にしても無駄なときがあると。僕は最初驚きました。そこで勇気を出さないでいつ出すんだと思ったのです。そんなんじゃダメだろうと。

少し長く生きるようになって、やけに君の言葉が身近に感じるようになりました。そんなふうに上手くいかないのです。今出そうと思う勇気を、今出すのが難しいのです。それでも人生は続いて、不器用にゆっくりゆっくり描いていたものに近付いて、自分の力量とやりたいことがやっと見合って、言葉が意味を成すようになってきました。ねえ、本当は秘密なんだけど、僕はいつもみっともないんです。過去の自分は大嫌いです。でも君があの日不器用だったように、出せなかった勇気があるように、その事実を愛せるように。僕も僕を愛したいなと思うんです。ねえ、君がくれた期待です。

 


僕は君が大好きなんですよ。どうしようもないんですよ。

君が自分に厳しいのを知ってます。厳しいというか、たぶん設定しているハードルが高いんだと思います。だから何かをやり遂げても見えるところで分かりやすく喜んだりしないし、数字や評価、目に見えるものが怖くて期待しないようにしてるところ、そしてそれは素直に言ってしまうところが好きです。僕が君を褒めそやしたって、きっとそれだけじゃ足りなくて、僕じゃない、ファンじゃない人の声も素直に聞こうとしてしまうところ、受け止めようとしてしまう君は、僕にとってはほんの少し寂しくて、やはり今日も愛おしいです。本当なら「何も怖くない世界」とか「いいことだけが起こる世界」とか「傷ひとつつかない世界」に好きな人を連れていきたくなるものだろうと思うけど、たぶん僕は君をそんな世界に連れていったりはしません。辛いことも嬉しいことも両方あって、傷ついたり傷つけてしまったり、怖くもある世界で君が生きてる事実が好きだからです。いじわるな気持ちじゃなくて、そういう世界だからこそ、君の弱さと強さはいっとうに輝いて、どんどんと君は魅力的になります。過去より今の、昨日より今日の君を好きになります。でもやっぱり、一日くらいたくさんの魚が釣れる休日を君にあげたくなります。

 

 

僕は君が大好きなんですよ。自惚れてるのは僕のほうです。  

少し前のDVDを見てたら、君は挨拶で「今も、ずっと、愛してる」と言いました。ずっと、ずっと、君はコンサートでこの言葉を使います。この間のテレビ番組で大きい魚という言葉に対して、「大きいってどれくらいからですか」と言った君が、そんな君が「愛してる」を選ぶことばかりを考えます。ファンの子が持つ君の名前うちわを、君の顔が印刷された公式うちわを見つけて、目を合わせてくれますね。ファンサうちわにいくらだってその時間をあげられるはずなのに自分のファンを見つけようとしてくれますね。そんな君のことをたくさん考えてしまいます。考えて、考えて、導き出される答えがどうしたって僕の都合の良いものたちばかりになるんです。本当に自惚れているのは僕なんです。嬉しいのと、恥ずかしいのと、信じるに足れない自分の上手く言えない気持ちがなだれこんできて、いてもたってもいられなくなってしまうんです。ねえ、自惚れたくないくらい、好きです。「愛してる」と言うことを、「ずっと」と言うことを、戸惑う僕より先に君が言うから、僕は君が大好きなんです。

 

 

僕は君が大好きなんですよ。本当は上手く言えません。

君は少し、ものを深く考える癖があるかなと思います………いや、これは僕の癖で、もしかしたら君に自分を投影しているのかもしれません。何遍もそう思いました。僕のどうしようもないところを君に押し付けてみて、君の素敵なところをもらおうとしているのかもしれません、だんだん分からなくなってきて、たまにハッとします。君と僕は違う人間でしたね。そういうときはすごく寂しいです。君を好きでいると寂しくなります。どうしようもないくらい好きなんです。好きです。1個もうまく言えないくせに、信じてほしいとだけ思ってしまいます。

 

 

僕は君が大好きなんですよ。

君が何かインタビューに答えるとき、瞳が左右に揺れる癖が好きです。見ているとだんだん切なくなってしまうんです。

君がライブで大切なことを言おうとするとき、少し前傾姿勢になる癖が好きです。言葉に力がこもって体にも力がこもってしまうところに愛おしさを感じるんです。

君が好きだっていうことに慣れないくらい好きです。何も与えてくれない日も思うくらいには。実際君を見たときには自分の気持ちがあふれてきてどうしようもなくなるくらいには。

好きです。好きなところがたくさんあるのか、君だから全部が愛おしく見えてしまうのか、僕はもう分かりません。

 

君が、今の君が存在していることが、うれしいんです。いろんな選択があった人生の中で今に続く道を選んでくれて、君が見つけられる場所にいてくれたから、僕は見つけることができたんです。それがうれしいんです。

 

ねえ、僕は君が大好きなんですよ。見つめあうことも十分に愛だと思うけど、君と同じ方向を向いてみたくなるんですよ。

 

 

 

 


+++あとがき

ねえ、僕は君が大好きなんですよ。自惚れてよ。

 このブログを書きたくなったきっかけはとある女子アイドルの子がアイドルという夢の中で拒食になってしまって、それでも健康になろうとしたときにまたネガティブな言葉を掲示板で見てしまって、握手会で言われて、というブログ *1 を目にしたのがきっかけです。どうしてネガティブな言葉は真っ直ぐに届くのかな。ポジティブな言葉でネガティブなものを超越できないかな、と思ったのです。
 この文章の縛りは一人称が「僕」であること、二人称が「君」であること、そして「好き」を繰り返すこと。書いて読み直しては、恥ずかしくて何回もわーーーーって転げ回りました。わーーーーって。書いては書いては、もしかしたらこれはもう私の気持ちとは全く別ものなんじゃないか、自分の考えるあなたとあなたというひとりの人間はまったく別もので届かない言葉ばかり書いているのではないかと思いました。自惚れさせたくて書こうと思えば思うほど、こんなに難しい話はないとやめたくなる心もありました。
 でも、自惚れさせたいのはやっぱり私の欲であり、自惚れさせられないと思うのは私の憶測でしかありません。信じるか信じないかもあなたが決めることであり、諦めることこそが自意識過剰であると思い至りました。それでもやっぱりあなた以外の人が読む手紙というのを前提でしか書けない自分もいます。感情を言葉にするという行為自体が嘘を作り出してしまうから、私はもう諦めるしかありません。

 

 ひとつくらい伝わるといいな。いや、ひとつも伝わらなくてもいいかな。いや、伝わってほしいと思うから書くのかな。あなたも愛もずっとも、私にとっては難解で、いつもいつも今も考えています。

 それくらい好きです。*2

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:丸海留希 ブログ – monogatari ( モノガタリ ) オフィシャルサイト

*2:書かなきゃやらないから書くけど、もっともっとドライにして相手に読ませること前提にして、ファンレターを書こうと思った。宛先調べるところから始めねば…