羽ばたいてゆくもの―――STORY感想

 

鳥が飛んでいって、綺麗だと思った。
(そこに理由は必要なかった)

 

 以上がSTORYコンサートツアーの感想だ。
途中、いろんなことを考えてもNEW STORYでこの一言になってしまう。
鳥が羽ばたいてる。
たったそれだけのことで泣いてしまう。

だから今回は感想なんて書けないかもなと思ったけど、普通に長くなった。

 

 

 

2020年という世界線

 STORYは去年のセットリスト・演出ほぼそのままらしい。「ビューティフル」も「チンチャうまっか」も「カナリヤ」もなく、手越くんの鬼のように高いパートは3人に割り振られて歌いきった。ごまかさず昨年のものをできる限りそのまま届けるNEWSというグループの頑固さはすごい。最高。やめられん。

 絵本調のファンタジーな物語は4人のお話だった。1人は「ある男」とだけ称され、手に入れた地図のかけらを鳥に渡した。鳥は戻らないことを告げた。
そうやって物語に組み込んでくれたこと。戻らないこと。「いた」ということ。
初日はすごい悲しかったけどだんだん飲み込めてる自分がいる。悲しみが私になじんできたのかもしれない。

 あと「2020年」という数字を変えなかったところもめちゃくちゃ好き。やっぱり頑固なんだよ。そういう軸を持っているところが素敵なんだよ。

 

 


「クローバー」、そして手越くん

 「クローバー」の手越くんのパートはJohnny's World Happy Liveと同様の箇所は歌わなかった。

あの日 僕ら偶然出会い
まぶしい 毎日が始まり
ひとり 僕じゃ全然できない事ばかりだったけど
希望をくれた君へ心を込めて
感謝の Yell を

3人はらせん状になったセンターステージを上がり、真ん中で内向きになった。

ずっと同じ景色見てきたね
君がいるから幸せ
幾千の悲しみや別れ乗り越えて
永遠に君に幸あれ

Happy  Live時点で手越くんはまだ退所していなかったから、当時は手越くんの代わりに歌ったんだと考えていた。でも、2021年。手越くんはNEWSにいない。

 初見で、無地の気持ちで、コンサートで「クローバー」のこのパートを聞いたとき「この時間だけは手越くんのためにある」と思ってしまった。他の誰がなんと言おうと、なんだったらNEWS自身が違うと言ったって、絶対にこの時間だけは手越くんのためにある。言い切れる。…そう思った。

―――時間がたって、配信を見て、今はそう思わない。NEWS自身が語っていないことに対して勝手な確信は持てない。ほかの人の気持ちもある。でもあのとき私はそう思った。そう祈った。そういうことは忘れないでおきたい。

 

 

コロナ禍でのコンサートツアー

 2020年春の延期・中止、12月の配信中止、結果2021年コロナ禍での有観客ツアーとなった。無事すべての会場をまわることはできたけど、何度も中止かもしれないと思うことはあったし、むしろ中止にならなかったことに驚いた。これが絶対に正しいというものが今、存在してない。心無い言葉がSNSに書かれていたこともあった。逆に…会場そばのタクシーの運転手さんに直接お礼を言われることもあった。自分で「良い」「悪い」の線引きをどこかでしなければいけなかった。

 小山さんは挨拶で、「バトン」の話をした。1つ1つの会場を終え、バトンをつなぎ、次へ、次へ。私には思いつけなかった視点。小山さんはほかにも「どうぞ真っすぐ帰ってください」ということも何度も言った。普段最大公約数の優しさで語る人だったから驚いたけど、そう言ってくれてうれしかった。

 終わってみて、このコンサートツアーができて本当に良かったって思っている。できるってNEWSとNEWSの制作陣が信じたことも。
私はずっと軸を持てずうまく信じることができなかったから、
すごいよ。

 

 

「4+FAN」

 今回(絵本調の)映像中、何度か拍手が起こった。魔物を倒せたとき、太陽の鎖がほどけたとき、夫人の家の扉が開けたとき、ケーキに明かりを灯せたとき…おめでとうやお疲れ様、良かったという意味で拍手を送る。(制作陣は意図してないだろうけど)地図が完成したときに起こる拍手から4+FANの手拍子にうつる、あの瞬間が好きだ。  4+FANのイントロで「ああ、やっとNEWSのライブにこれたんだ」という何度目かの喜びでいっぱいになる。声は出せない代わり、大きな手拍子をして、たくさんペンライトを振る。
 4+FANを歌うのはこれで最後かもしれないというツイートを何度か見た。そうかもしれない。そうじゃないかもしれない。そうじゃないといいなと祈る。いい曲だから。

ありえない夢の続き 君と掴みたいから

 

 

 

もらったものはもう言葉に表せない

 と思ったのは四部作振り返りパートだった。例えば、自分は忘れているけど周りが覚えていることがあって、その人のおかげで思い出すことができたことがある。おそらくNEWS自身が忘れていることを私が覚えているということは、よくある。それで…具体的にはWORLDISTAの旗なんだけど…毎回忘れちゃうんだよね(笑)。でもJrがWORLDISTAのパートで旗を振って、かっこいい!好き!って毎回思う。思ったことを思い出させてくれる場面が幾つもあった。そのたび「好きだ」って思わせてくれる。
 見るたび胸が締め付けられて、この人たちがいいってこころが言う。心臓ってここにあるんだなと気づく。だからもう言葉じゃ表せない。特別なグループ。

 

 

 

いる人の話がしたい。

 STORYが4人のコンサートであること、3人になって初めてのコンサートであることによって、どうしても手越くんの話が多くなってしまう。悪いことじゃないけど、なんか私は嫌だ。いることを選んだ人の話をその倍はしたい。なので、します。かなり長くなった。


★小山さん

 NEWSを好きになるBeforeとAfterで一番印象が変わったのは小山さんだ。あんなファンサマシーンだと思わないじゃん!?アイドルとしての魅せ方が分かっていて、ぶりっ子がうまくて、可愛くてセクシー。年々フェロモンが増していくけど、STORYでは爆発してた。した。私が。
 「STAY ALIVE」を初めて見たとき、「あ、小山担しんだな」って確信したし、あんな…かっこいい曲に少し破れたシャツ、後半でシャツをはだけ外すサングラスにサビは可愛い振り付けって小山さんのいいところ全部載せソロ曲で叫べない小山担かわいそうすぎん? 確実に殺しにきてるじゃん。
 歌。どんどんうまくなる。「夜よ踊れ」で「愛に浸る者たちには窮屈すぎる摩天楼さ だるいジャズの繰り返しで踊るBlue Monday」が小山さんのパートになっててひっくり返った。また「生きろ」の「果てしない闇へと向かって 飛べやしないとやたら凹んで」も素敵で、これからの未来に胸が踊った。
 でも、喉の話があって。詳しくは分からないけど「焦らないで」とか「無理しないでほしい」とファンが思うことをよく分かってくれる人だから、その点についてはあまり心配してない。だからどうか、と思う。早く良くなりますように。早く、もし時間が掛かってしまっても良くなりますように。神様、頼むよ。
 「伝えるということを続ける」という夢。小山さんはここ数年「伝える」についてよく語ってくれる。そして実践してくれる。先述した挨拶もそのひとつだと思う。小山さんはエゴサしているのか、ファンが想っていることをよくキャッチしてくれる。伝えるが上手い人は、たぶん「聞く」も「言う」も、注意深く繊細にできる人だと考えている。芯がある小山さんの言葉はいつも安心して聞ける。(思うのは自由でも言うのは勇気だと考えているから、小山さんの言葉はいつも頼もしい)
 「クローバー」。愛情のひと。家族愛的なところも歌っているんだろうけど、小山さんの艶っぽさはどうしても恋のそれを思わせる。「こんなに愛してるのにどうして分からないの」とでも言うかのように、強気な愛。温かくて、包み込んでくれる愛。いつもドキドキしてしまう。

 

 

★増田さん

 King Gnu「白日」以来の「そんなキー出せんの!?」とビビったのは「Love Story」の「また明日ねっていったのに離れられない」だ。増田さんが高いキー出せることは知っていたけど、予想の何倍もすごい。「エス」や「夜よ踊れ」でも力強く、快感を覚えてしまうほど表現力が豊かで気持ちいい。(もしかして天才と秀才で分けるなら天才タイプなんじゃないの!?と思うくらい歌がすごい。才能なんじゃないかって。もちろんその才能は努力あってこそと分かっているけど、こんなふうに歌うんだと何度も驚く。ずっと聞いていたい)
 今回のOPの赤い衣装は増田さんいわく「ずっと温めてきた赤い衣装」(横浜公演MCにて。文言はだいたいです)。「一番強くてかっこいいのは赤」だと思ってて「四部作ラストで赤い衣装を作りたかった」「ちょっと誘惑に負けて過去に赤い衣装を作ったこともあるけど」らしい。愛おしい。
 増田さんのすごさであり長所はこだわりまくるところだ。そんな彼が作ったSTORY衣装で一番好きなのは青い軍服の衣装。(おそらく偶然だが彼が作る青衣装は印象的な場面で見る気がする)NEVERLANDを思い出させてくれるところ、絵本調の映像からそのまま出てきたようなところも素敵だが、パンツがメンバーカラーなのだ。あれだけ固定されるのが好きじゃないと、メンカラ衣装は作らないようにしている(それを利用してサプライズもした)増田さんが、メンカラのパンツをNEWSに着せている。うれしいというのも変だけど、増田さんがこだわりの強いことを知っているからこそ、大きな意味を感じてしまわざるを得ないのだ。
 「クローバー」。希望のひと。私は増田さんのことが、ずっとよく分からない。なぜそんなにこだわるのとか、どうしてそう思うのかとか、よく分からなくて純粋に不思議だ。論理…言葉では説明できない何かを掴んで生きているように見える。だから別に言葉は求めていないんだけど、作詞がいつもすごくて。難しい言葉は使わないで、唐突でも確かに伝わる表現、代替えできないことをする。
 増田さんは、自分のパートを終えるといつも笑顔で頷く。「大丈夫だよ」というふうにも「こっちだよ」と導く純真な子供のようにも見える。幼いころの憧憬をいつも持って笑ってくれる増田さんは、愛おしい。
 「ずっとこの仕事を続けていきたい、NEWSで」という夢。「君の言葉に笑みを」のラストでは「シゲと小山とずっと一緒に歌っていたい」と言った。原体験というのだろうか、初めてのグループがNEWSなことも憧れの会場が東京ドームなことも分かる。でも私が想定しているより強く何度も言ってくれる。ずっと言ってくれる。伝わってくる。もう大人なのに、私より年上なのに、子供の話を聞いている気分になる。「すごくいいね」「できるよ」「楽しいね」って言ってあげたくなる。

 

★加藤さん

 好きなところが多すぎる…(笑)。考えるより前に「好きだ」って感情でいつもあふれてしまう。
 表現が言葉寄りの人で、いつも見ていて面白い。「Love Story」の「僕にだけ見せる仕草のようなサイン」という歌詞の「サイン」では「(バワリーポーズをつなげた)ずっと」のポーズをする。どの曲か忘れちゃったけど「キス」の歌詞では人差し指と中指を唇につける、「Love Story」で見せる振り付けの「キス」をしてくれる。「夜よ踊れ」の「Aim at the beast」では両手の指を丸めてガオーって(可愛い…!!!!!)、「WORLDISTA」の「Still...」は、WORLDISTAツアーでは人差し指を唇に当てる秘密ポーズをしてくれたけど、もう秘密じゃないから顎に手をやるポーズに変えている。その記号は、私たちの共通言語。好きだ。
 あと「STORY」で「繋がってく点が線になるように」ではSを描くところ。点はSになった。「生きろ」で「来た道」で人差し指で来た道を指し、「行く先」では親指で行く先を指し、「結び付けてしまうような」で小指を立てていたのに、今回は「結び付けてしまうような」で∞を描いた。輪廻、無限、あるいは永遠。………落とす記号を拾いあげるのが、楽しい。
 「美しい恋にする、美しい恋にするよ」と2回言うとは思わないじゃん!!!増→加→小→増という順番でもいいところを2回加藤さんに割り振って念を押すところ、解釈一致過ぎて最高!!!
 「Narrtative」は『ピンクとグレー』でしたね!(※個人的解釈ですよ)
 らせんになったステージをのぼる最中に「ああ、てっぺんから落ちるんだな」って不思議と確信をした。ごっちー鈴木真吾、白木蓮吾ーの言葉、そのお姉さんの「やるしかない、やらないなんてないから」という言葉が浮かぶ。お姉さんがコンテンポラリーダンスの舞台上で高いところから落ちたことを思い出す。加藤さんが「Narrtative」で行ったこととごっちのお姉さんの行為は正確には一致してないのに「後ろから落ちていく」「加藤さんならそうする」って思った。不思議だ。
 ここからも勝手な考察だけど、黒衣装のJrはインク、加藤さんは語り部―作者―であり原稿用紙だ(私も気づけなかったんだけど加藤さんの衣装は原稿用紙らしい…)。アウトロでスクリーンの映像が巻き戻る。曲自身も何かが巻き戻る音が聞こえる(ような気がする)―――そして、落ちる。だから加藤シゲアキは、Narrativeは、書くという行為は、最初から「やらないなんてなかった」んじゃないかなという考察。もしくはそういう言葉で紡がれる物語だったという描写か。噛んでも噛んでも味がする素敵な演出。
 「君の言葉に笑みを」のシゲぴが可愛すぎる。振り付けがあるので双眼鏡が持てないのが悔しい。ずっとシゲぴしか見てなかった。何あの可愛い生き物。可愛い。可愛い以外の言葉が奪われた。可愛い。狂う。かわいい。
 歌さあ…伸び方がすごかった。加藤さんはもともとめったに音を外さないし走ったりもしない。すごい。正確。
 「クローバー」。誠実のひと。誠実以外有り得んでしょ。誠実を擬人化したらたぶん加藤さんみたくなると思う。彼のパートは人生の中でも青年期(特にモラトリアムの終わり)くらいをイメージする。どうして。なんで。どうしよう。答えのない夜に灯っている、光。救いほど眩しくない、寄り添おうとしてくれる誠実という光。ずっと、そして約束。「We’ll be together」は心の中で歌った。
 加藤さんの夢は「みんなの夢でいつづけること」も誠実すぎるよ…ここでの「夢」は虚像ではないじゃん。誠実の辞書には「真心を持って人や物事に対すること」と、真心は「偽りや飾りのない心」と記されている。この「偽りや飾りのない心」が加藤さんだと思う。飾りなく、頑張る姿は確かに私の夢になる。本当は「夢」なんて言葉は自分に都合が良すぎると思ってずっと使えなかったんだけど、杞憂だったな。君は私の夢だよ。

 

★書いてたら手越くんの話もしたくなっちゃった!

 手越くんについては「幸せであれ」って本気で思っているし、心配もしてない。ていうか余計な心配している人なんか踏んでしまえ、そんな言葉を投げかける人なんておいて幸せになれと思っている。過激。…STORYツアーを終えてからNEWSをやめようとしてた手越くんに「ふざけんな~!」と最近ようやくちょっと思うようになった(笑)。そんな綺麗なピリオド打たれて残される身にもなってくれとか思うけど、おそらくそのもしもの世界でも「幸せであれ」とは言っていたと思う。逆にコロナがなくSTORYツアーをやっていたら手越くんはやめていなかったんじゃないかなとか、そういうもしもを考える。でも結局全部IFだ。もう叶わない。私は続けるを選んだ人たちを応援するけど、手越くんのことはこれからも思い出すし普通に書いたりすると思う。
 だから、どうか幸せであれ。できるだけ心から笑う日が多くありますように、ご飯がおいしくありますように、幸せでありますように。

 

 

 

サプライズ

 オーラス公演にてNEWSへサプライズがあった。「NEW STORY」を歌った動画と、NEWSへ伝えたいことを画像、もしくは音声で事前にファンが送り、コンサート会場では聞かせられなかった歌と言葉をサプライズという形で伝えた。
 あの瞬間のNEWSの表情を忘れることはできない。小山さんと増田さんは、持っている殻、膜、あるいは平常心という仮面が外れてしまったような顔をしていた(今まで見たどれとも違うように思えた)。アイドルとファンで良かった。そうじゃなきゃ見られなかった、生きている人間の表情。加藤さんはぐっとこらえながらも、うれしそうに笑みをこぼしていた。でもそのあと歌いながら泣いていて、見ている私も泣いて。
 伝わったという感覚がある。たぶん君たちが思っているより、私たちはNEWSが好きだよ。大切だよ。たくさんもらっているんだよ。だからありがとう。好きとか、うれしいとか、感謝だけが存在していた。美しかった。

 

何度夢に敗れ 夢にはぐれ
ここまで来ただろう
生きていく一度きりの物語を
他人(ひと)に言えないこと 言わないこと
胸にあるだろう
生きていくすべて抱え進んで行く
自分(きみ)のSTORY 


歌ったのはこのパートだった。NEWSに、私たちに、ぴったりだと思う。

 

 


そして鳥が飛んでいく

 「NEW STORY」で何かが羽ばたいていくライトの演出があった。3人が歌っている最中、左右に伸びた花道にある棒状のライトを翼とし、センターステージの電球はその翼の本体として光っている。

 なんとなく、あれは鳥だと思っている。絵本調の映像に登場していた4人の男たちの肩にいた鳥。「カナリヤ」じゃなくて、手越くんでもなくて…一番近いのは「SUPER STAR」。正確には「SUPER STAR」にも鳥の描写はないから、私の心象風景でしかないんだけど。
 「あ、飛んでる」って思って。

 あぁ、綺麗だなあ、そうだったなあ、綺麗だったなあって。

 増田さんはこの曲のハモのタイミングで、小山さんと加藤さん、それぞれと目をあわせようとする。ハモで目をあわせるのは増田さんの癖であり、手越くんの癖でもある。遠くとも無意識に目をあわせて歌うテゴマスが好きだった。
 横浜公演ではコヤマスもシゲマスもハモで目が合うことはなかった。喪失感というか…こういうことがあるたび手越くんのことを思い出すんだなって気づいてとんでもなく寂しい気持ちになった。
 でも、どこの会場からか知らないけど、あるときから小山さんも加藤さんも、増田さんと目をあわせて歌うようになった。コヤシゲのハモのときには目をあわせないのに、コヤマス、シゲマスのときだけ、増田さんのほうを向く2人がいる。その優しさでまた泣く。

 

 いろんなことがあるって言えばありきたりだけど、いろんなことがあった。良い悪いと一言で断罪できない、いろんな寂しさや願い、夢。あった。STORYはそういうあったことを全部包み込んでくれるコンサートだった。

 

 でもSTORYは4人のコンサートだったから、早く3人のコンサートも見たい。わくわくする。おそらく癖強いコンサートになる。
 まだまだあるであろう"これから"が、楽しみ。

 

 

 


おまけ 入りきらなかった話

(センターステージ)センターステージ愛している!!!中心のステージと左右に伸びる花道という構造でもう愛したのに、垂れ幕上のスクリーンと降りてくるライト…すべてがものすごい計算の上で成り立っていた。近くて見やすくて工夫しがいがあるセンターステージ…好きなんだよ………/(Jr)NEWSはJrの見せ方が天才である。「チャンカパーナ」の2番をあげる器のでかさ、Jrの衣装で四部作を魅せるところ、大画面にJr紹介VTRを流すところ…Jrくんたちもどんどん歌が上手になっていって見てるこっちまで楽しかった。/「何度でも」のスクリーン映像で、増田さんの映像手前にネバラン鍵がついてるバッグがあって、おそらくカイコタボンセンのぬいぐるみをつけてる人が通ったりしててびっくりした。WORLDISTAは見つからなかったけどありそう/ある男が地図を鳥に託し→最後のピースを地図にはめる→(雨が降り)何者かが夜の訪れを告げた…からエスまでの流れがマジ綺麗。Dragonism(何者か)→夜よ踊れ(夜の訪れ)→FIGHTERS . COM(地図を完成させるため戦いをしなければいけなくなった? 闘いの曲)→エス("The answer is エス"、戦いに勝ったのかな)→ピースは「S」に変わり、地図が完成する。/STORYのセトリ自体が四つ葉のクローバーの意味の希望・誠実・愛情・幸福ゾーンで分かれてるところマジで好き。本当にそういうところが好き。/NEWSくんへ「夜よ踊れ」を覚えててくれてありがとう。ずっと歌ってくれ。頼む。好きだ。/「Love story」のファンパート「Lalalala...」を歌えない代わり、サビの振り付け踊るのがロマンティックで好きです。歌いたいがゆえに歌の代替ができていて楽しい。/「君の言葉に笑みを」の幸福値カンストしてる。センターステージだから小山さんが「自分から見て右から」と指示くれるのありがたい/4+FANで加藤シゲアキがJr引き連れてラップ歌うところ、クラスで一番やんちゃな子っぽくて大好き。いつもシゲぴ楽しそうで好き。/小山さんの属性が魔法(素直になる魔法)なところ、魔法にかかったわけじゃないのに素直に心打たれる老人が好きだし、おそらくシナリオを描いてるのが加藤シゲアキなので純粋な萌えが走ってしまう/ペンライトを付けたり降ったり相変わらずファンが何かをするパートがあって楽しい~!(配信を一緒に見てくれた同居人が増田さんのターンでペンライト持ってないからXポーズしてて笑った。それは紅。)/個人的MVPは「Perfect Lover」。振り付けに指ハートあるので優勝。サビで止まる振り付けが最強。「アイドル」として見るには味付けが強くてね…これでしか生きていけない…「IT'S YOU」が好きな人間はみんな好きなんじゃないかなって思った…いや知らんけど…/加藤さんは(映像にて)旗で風を起こすんだけど、それが光につながっているところが好き。どこかで加藤さんを光属性だと思っているので。/絵本調映像が終わるとNEWS RADIOになるところ…ファンタジーとリアルのバランス、そこから「クローバー」と四部作ダイジェストが始まる流れ…すごくいい…構成がしっかりしてて楽しい…/「美しい恋にする、美しい恋にするよ」の加藤さん念押しゾーン、初日だけ圧がすごい必死バージョンだったけどもうやらないんですか?やってくれませんか?加藤さんは必死なほうが好きです。どうですか?/「僕らの名前は?」に対して心の中で「NEWS」と叫ぶ瞬間。全部の音が消えて、無音になるところ。/OPの映像で四人に対して「誰もが無謀だと言った」というところでもう泣いちゃう。ある種の事実が物語に落とし込まれていて、そこから始まった四人が好きだから、今に繋がっているから、泣いてしまう。

 

 

 

 

 

 本当は去年2020年の宮城公演へ、NEWSの縁で出会った友人と一緒に行く予定だった。ホテルと、小山さんがTV番組で行った温泉を予約しながら「こんなにうれしいことがあってもいいのかな」って困るくらい幸福だったことを覚えている。うれしくて、怖かった。

 結局全部中止になって、今年のSTORYツアーでも全員で入れる日はなかった。なくとなく「あ、もうこのメンツでコンサートに行くこと一生ないのかもな」って思った。仕方ないけどあの予定を立てる時間で十分愛おしかったから、大丈夫だと思うことにした。

 そしたら生まれて初めての復活当選をして…うち一人は一公演も入らない予定だったから、本当に、自分のことみたいに嬉しかった。当日はNEWSももちろん見るんだけど、友人の叫べない代わりに揺れてしまうペンライトと身動きが本当に面白くて。話せない代わりに何度もみんなで顔を見合わせた。「どうしよう」とか「嬉しい」とか「やばい」みたいな感情を伝えて、伝わって。
楽しかった。
嬉しかった。

 

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NEWSは居場所という言葉を使う。「NEWSが居場所になれたら」。

もうなってる。

NEWSを通して出会えた友人。NEWS以外のこともたくさんできる友人。NEWSを通して知ったもの。NEWSと過ごした思い出。多すぎる。だから何度言っても足りない。ありがとう。

 

 

 お題「NEWS LIVE TOUR 2020 “STORY“ ー私のSTORY、私とSTORYー」

アイドル短歌を本にしたよ後編 ~みんなも作ろうよ~

 

みんなもアイドル短歌を本にしようよ!!!気軽に短歌集を作ろうよ!

 

私が作ったアイドル短歌集→『3回言えば永遠になる』

 

このブログの前編↓↓↓

whynot4696.hatenablog.com

 

 

また短歌集を作る機会があるかもしれないので、備忘録として次回に活かしたいことと役に立ったサイトなどをこの記事でまとめした。てか役にたったサイトのまとめ記事です。
なお、初めて本を作ったので当たり前の話も幾つか出てきます。
初めてとか関係なく当たり前の話も出てきます。

※〆切設定なしで作ったので〆切に対する言及はなし。でも〆切はあったほうがいいと思う(ぬるぬるやったら約1年掛かったので)
※短歌(中身)は出来上がっている想定で話を進めます。短歌の並べ方、推敲の話は(参考になるかは分からないけど)前編へどうぞ
※制作中何度もAdobeソフト買ったほうが楽じゃない?と思ったけど結局買わなかった。なのでこのブログはAdobe関連ソフトを使わないこと前提で書いてます。

 

 

本の大枠づくり

★短歌集を作るならプロの本を参考にするのが一番

 今回私が参考にしたり参考にしきれなかったけど超いい短歌集です

たやすみなさい (現代歌人シリーズ27)

ハッピー☆アイスクリーム (集英社文庫)

淋しいのはお前だけじゃな (集英社文庫)

玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ(1400円+税 ナナロク社)

 

 

★構想に一番時間が掛かる

 装丁に対する意識が低すぎた。自分が何をやりたいかを決めるまでに時間がめっちゃ掛かる。本を作ろうと決めたら本屋を回れ。Pinterestを活用しよう。


★見て便利だと思ったサイトはちゃんとまとめておく

 迷子になる。いいねしたのかリツイートしたのかブックマークしたのか忘れる。全部になくて詰む。


★早めに決めたほうがいいこと

 正解はないけど、テーマ>タイトル>構成の順に次回は決めたい。

 テーマ別になくてもいいし(アイドル短歌が1つのテーマなので)、テーマと収録短歌すべてが一致してる必要はないけど、全体のテーマを決めると装丁などが一気に楽になる。モチーフ、色、ワードがあると楽!
 タイトルも同じ理由で早めに決めておくと楽です。

 

★印刷所はいつ決める? どうやって決める?

 絶対これ!という解はないけど、本のサイズ、やりたい装丁(≒譲れない条件)、だいたいのページ数、部数が決まったら見積もりで出せるから相場を見ておきましょう。  譲れない条件は値段であったり、紙をこうしたいとか、優先順位を決めておくといいです。こうやって書くと引っ越し先選びみたいだな…  
 印刷所の目星をつけたら決めるのは(大型イベントと被らなければ)最後のほうで大丈夫です。※目星つけた印刷所の見積もりはメモって必ず残しておけ!


・印刷所選び参考URL

【文庫小説同人誌】各印刷所さんの紹介・比較10社!【1】|初心者向け同人誌作成お助けサイト「はに同。」

同人誌印刷をお願いした印刷所まとめ|ちゃんちゃん|note

 

★本の基礎知識について

 個人的に分かりやすかったのはポプルス様。(※入稿にまつわることは利用する印刷所のサイトは必ずよく読んでおこう)

原稿作成について

 

 


★構成について

 短歌がだいたいまとまったらどの順番にするか、入れたいイラストや素材、(必要であれば)エッセイや掌編はどのタイミングで入れるか、大枠を作ります。(短歌だけでももちろん大丈夫!)私は付箋でやりました。

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実際に作ってみる

 以上の大枠が固まり、本のサイズが決まったらWord等のソフトで実際に短歌を並べていきます。(扉絵、挿入する画像は(Wordは) 後でも大丈夫だったので、私はイメージを掴むために先にどんどこ並べてしまいました)Word、一太郎のソフトがオーソドックスですが、調べればスマホからPDFに書き出してくれるソフトもあります。

iPhoneだけで完成! はじめてでもキレイにできる小説同人誌の作り方

 

 

私はWordを使ったので、こちらのテンプレートを利用しました。

テンプレート各種 | 同人誌 印刷|株式会社 栄光|栄光情報最前線

ほかにも複数のPDFを1つにまとめてくれるサービス(ダウンロード不要)もある

オンラインでPDFファイルを結合

 

 

余白の設定については、実際に持っている本を定規で測って(アナログだ…)決めました。参考までに、私が制作したA6サイズの短歌集(3回言えば永遠になる)の余白(うち3mmは断ちきり)は以下のとおり。

短歌ページ
文字サイズ:9pt
上:18mm 下:12mm
左:15mm 右:15mm とじしろ:8mm

エッセイページ
文字サイズ:8.5pt
上:21mm 下:16mm
左:15mm 右:15mm とじしろ:8mm

 

短歌や文章の雰囲気によるので、迷ったらコンビニ等で試し刷りしてみましょう。

 

そのほか参考になったサイト

個人的 「皆さんのA5本小説設定を教えてください」まとめ - Togetter

A6小説同人誌の文字組&装丁まとめ - chaplet

 


★校正

 iPad勢はSideBooksというアプリを使うとめちゃくちゃ便利です。Drop boxに入っているPDFを実際の本のように読めるのですが、文字入れ可能で、見開き表示してくれるし実際に紙をめくっているようなモーションが付きます。めちゃくちゃ便利。

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ちなみに私は短歌+文章を第5稿になるまで校正しましたが、エッセイ部分のファクトチェックを怠り日付の誤字をやらかしました。校正は大事…………

 

 

装丁について

表紙デザイン、紙、文字デザイン、書体、遊び紙etc...無限に遊べます。


★紙見本はあったほうがいい、試し刷りはしたほうがいい

 紙見本はあるとめっちゃ便利。厚み、質感はモニターじゃどうしても分からない。眺めているだけでも楽しい。目星つけた印刷所の物を頼もう。

 試し刷りも色味が思ったとおりに出ない場合があるので、こだわっている人はやったほうがいい(私はここでトラブった)

 

そのほか表紙について参考にしたサイトは以下の通り。数がめっちゃあるところが表紙で悩みまくったことがうかがえる。ちなみに表紙については印刷所に依頼する方法、プロに依頼する方法(後述)などなどあります。印刷所が小説同人向けにやっているサービスは結構あるので、ぜひ調べてみてください。

 

#字書きが絵描きにお願いせずに素材やフォントや写真を駆使して作った表紙 タグまとめ - Togetter

あなたの同人誌表紙見せて【デザイン表紙編】&ロゴ - Togetter

イラストなしで作った文庫同人誌の装丁・紙・印刷について(失敗と改善編)|あいだ|note

黒ホロ箔とか透明ホロ箔を表紙に使った同人誌に興味がある - Togetter

#お節介 視覚的情報伝達の勉強 - 390のイラスト - pixiv

 

同人誌表紙でめちゃくちゃ使える素材。数が多い。すごい。

tenpal.booth.pm

 

扉ページメーカー(使うと簡単にいい扉ができるよ!)

縦書小説PDFメーカー|シメケンプリント

 

#同人誌目次展覧会 hashtag on Twitter

 

フォント選びに最高なサイト

tameshigaki.jp

 

 

 

 

★自分で表紙を作ってみよう!

note.com

note.com

note.com

 

おまけ 表紙デザインを依頼する

・メリット
綺麗、自分の本にイメージ画像がついて嬉しい、装丁の相談ができる(良識の範囲内でね。もともとそういったサービスをしてるわけじゃないよ)

・デメリット
お金が掛かる、いつまでたっても自分で表紙が作れない

 

私は今回星屑屋様に依頼しました。ぎりぎりまで自分で描こうか迷ったけどいいものはできないし中途半端になるくらいならと「小説 同人 表紙依頼」等でヒットしたサイトを比較しながら選びました。
 プロの漫画家である友人が「同人誌の表紙デザインはデザイナーにやってもらっている。デザインは難しい」と言ってて〇〇ちゃんでさえ?と思ったのも理由の1つです。

 星屑屋様を選んだ理由は(素敵なポートフォリオが多いのはもちろん)「こういうのは好みじゃないな」というのがなかったからです。依頼の際はポートフォリオの中から好きなものを挙げたり、イメージしているワードを共有しました。そのほか装丁について依頼するデザイナーさんに相談してみるのもいいなと思いました。
 というのも、今回箔押しを予定していたのですがデザインが素敵すぎて箔が邪魔だと思う(!)事態が発生し、箔なしであればこの飾りをつけてはどうか?等々いろいろご提案いただいたからです。とてもありがたかった。

 

通販について

 コロナ下で頒布をどうすべきか悩んだ結果、BOOTHを利用しました。匿名配送にする必要はなかったかもなと思うんですけど…発送は慣れれば楽ちんです。個人情報をこちらで扱う必要がないため、マジで誰が買ったか分からん。知らない間にフォロワーが自分の本を持っていたりする。ビビる。うれしい。

 

awoii.hateblo.jp

notare.hatenablog.com

 

 

 

 

そのほかこぼれ話

 

・こぼれ話1 あきらめていく「やりたいこと」

トレペを使用した装丁、箔押し、遊び紙…今回諦めたやりたことです。やりたくてもできなかったり、断念することは当然ある。むしろ諦める決断が本づくりにおいては大事だなと思った。

 

こぼれ話2 統一感

章タイトルは深く考えず好きなワードをチョイスしたら目次デザインがまとまらず死んだ。章タイトルの文字数調整、あるいは統一感があるともっと綺麗な目次にできたと思う。まあ目次はあってもなくてもいいんだけど。

 

こぼれ話3 案のまとめ方

装丁を決める中、表紙の紙や扉デザイン、遊び紙等々、1つ1つバラバラに決めると統一感がなくなってしまったり予算が合わなくなってしまったり、どうしよう~!!!と混乱してたら友人が「表紙の紙をこうするなら遊び紙は〇〇というふうにパターンを複数作れば?」とアドバイスをもらいました。めっっっっっっっっちゃ頭良い…試しに数パターン出したら驚くほどすんなり決まりました。ありがたい。

 

こぼれ話4 「ぎりぎりに変更」は失敗する

入稿直前に「やっぱり表紙の紙を変更して遊び紙は〇〇入れようかな!?」みたいなのが浮かんだんですけど、経験上そういう直前の変更って失敗することが多いんですよね。アドレナリンだけで物を言ってて全体を見渡せていない可能性があるので。1回引いて考えてください(次回の私へ)

 

以上です。みんなも気軽にアイドル短歌集を作ってください。私はこれっきりの気持ちでやりたいこと全部やったから100Pになったけど、薄くても本は本です。作ってください。*1

 

 

その他入りきらなかった参考サイト

 

まじで参考になった。全部書いてある。

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#小説 【講座】小説同人誌(特に文庫サイズ)の作り方 - ザーラのイラスト - pixiv

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*1:正確には本文96Pです。表紙1-4を計算に入れてしまった。

アイドル短歌 を本にしたよ前編~裏話~

 

hu-hayashi.booth.pm

 

過去に詠んだアイドル短歌をまとめて本にしてみました。
備忘録として、前編は今回作った本を中心に裏話、後編は次回に使えそうな話でまとめます。

ちなみに、発行の理由は壮大な暇つぶしです。新型コロナウイルスが蔓延し予定してたコンサート・舞台が中止となってしまい暇になってしまったので。最初の緊急事態宣言のとき(2020年3月)に出そうかな~と考え、2回目の緊急事態宣言(2021年1月)に入稿です。長い。慣れれば1カ月で済むような作業を約1年掛けちゃいました。春に考えるもまとまらず、夏はアイデアのアンテナを張りつつ制作せず、ほとんどの作業は秋にやって、冬に詰めて入稿という流れ。

 

 

 

タイトル『3回言えば永遠になる』について

自作の短歌「強く射て その星の尾は伸びていく 3回言えば永遠になる」より。

 なぜ、いつこのタイトルになったのか本当に謎(笑)。でも本を作るにあたり、このタイトルに助けられることが多かったです。流れ星の短歌なんですが、意味や意図がよく分からないですよね。私ですらこの短歌の意味は何度か変わっています。なので解説しないし好きに解釈してほしい。


テーマ ――― 星、祈り、願い

 作りながら決まった。最初に決めるべきだった。なんだったら出来上がってからこのテーマに気づいたかもしれない。
 短歌本の中に言語化未満のなにか(詩のようなもの)を入れようか迷ったんですけど要素が多すぎるので、あとがきを利用して言語化未満を入れました。テーマに通じる、星(アイドル自身や好きだと思う気持ち)はここにある。星(アイドルやファンを照らすもの)は見える…みたいな"星"のイメージを広げることができました。自己満。

 


カバー表紙

 最高です。迷った結果、デザイナーの方(星屑屋様)に依頼しました。宝石みたいで見た瞬間に興奮した。祈りや星のような部分もよく出ている。自分の短歌にイメージ画像がついたみたいで嬉しい。

 


装丁について

・A6(文庫本)サイズ、カバー付き
・ゴールドのスピン(栞紐)つき
・表紙(カバー下) ファーストヴィンテージ ブルーグレー172kg
・本文 淡クリームキンマリ72.5kg

 

 A6にする必要はなかった。四六判と悩んだんですけど印刷所が限られてしまい…。手に収まる感じ、本棚に綺麗に並べられることを考えるとこれで良かったかなと。ただ文庫本だと遊び紙がやりづらい(分厚い紙だとめくるとき引っかかる)、本文の用紙も薄い紙推奨なので、装丁の自由度は減ります。

 表紙(カバー下)は商業誌っぽさを出したく色付きに。ぎりぎりまで黄色系にするか迷ったけど、ブルーグレーの夜と朝の間くらいの色に落ち着きました。可愛い。今回はシンプルなカバー下になりましたが、次回カバー付き作るならもっと工夫したいな…驚いてほしい…

 スピンについては、カバー表紙のデザインをいただいた時点で「これにスピン付けたら良さげだな~」「可能ならやろう~」と思ってました。ちょうど印刷所のオプションが余ったので付けましたが、予想以上に好評で嬉しかった~!実はスピンは通販サイトやTwitterに出してない情報でした。手元に届いたとき「アッ!」ってなってほしくて。小さいサプライズ。

 


構成の話

 短歌、エッセイ、イラスト。やりたいことをやったらこうなった。

 イラストは章扉以外にファンレターのストーリーを入れました。手紙は米代恭さんの『あげくの果てのカノン』からインスピレーションを受けた。ほとんど感想をもらってないから私だけのロマンティシズムなのかも(笑)。ファンレターを書くという行為、うまく書けないこと、届くこと。短歌にできない感情だったので満足。自己満は大切。 

 章扉のイラストはほとんどCanvaを使っちゃった…自分で描いたのもあるけど、Canvaのイラストは便利!ただ見る人が見たらCanvaじゃんって絶対なるだろうから、次回は素材集を買うなり、もっとうまくやりたい。お気に入りは流れ星です。Procreateで描いたよ。

 

 エッセイ(と呼んでいいのか? ほかの呼び方が見つからない)は当初は掌編小説、つまり創作のアイドルとファンを描こうとしたのですが、慣れないことはなるもんじゃないですね!無が出来上がってしまったのでボツにしました。結局自分の短歌ブログに書いたものをそのまま短歌本に入れました。次回やるなら今度こそ掌編を書きたいな… 

また、COVID-19の章をつくることと、コロナにまつわる文章を入れることは、エッセイを入れるとなった時点で決めてました。きっかけがコロナだったし、コロナにまつわる自分の感情は残しておきたかったので。

 

 さらに余談ですが…短歌のみの本にするつもりはもともとありませんでした。複数の短歌集を参考にする中、エッセイやイラスト等は短歌が立体的になっていって魅力的だと思っていたので。その中で掌編小説>エッセイで最初に考えていたのは、詩歌における匿名性もまた魅力的だなと…ここからは言語化未満です…

 今回の短歌で特定のアイドルを詠んだ短歌でもグループ名とか名前は外してます。外すと意味がなくなってしまうようなものは短歌ごと外しました。
 例えば増田貴久という名前をつけて詠んだ短歌「重たくて少し暑くて不評なの それでも着たいのアイドルスーツ」は、増田さん(衣装を制作する+アイドル意識の高い人)じゃないと成り立たないし、名前の記載がないと面白みも減る。(重たくて暑いというのは増田さんが作った衣装に対するメンバーの感想という、実際にあった話です)
 逆に「見せられる夢があります見せられぬ夢もあります僕はアイドル」も増田貴久さんを詠んだ短歌だけど、これは増田さんを知らなくとも(プロアイドルと呼ばれるような人を好む人がいれば)共感できうる短歌だと思うので名前を外し短歌本に入れました。本人を知っていると面白い短歌は、本人を知らないとつまらなくなる。アイドル短歌は常に共感性を高める効果と、排他的になる部分が表裏一体です。

 アイドルの匿名性を高めれば好きな人を当てはめることができるので、NEWSファンじゃなくても楽しめるよう短歌の補足としての固有名詞はつけませんでした。(今回は外してしまった、このアイドルについて詠みました!っていうのは別の本にしたいな~)

 エッセイもできるだけ特定のアイドルに詳しくなくとも分かる内容のものを抜粋しました。例外は「あのね、僕は君が大好きなんですよ。」の文章。あとがき以外そのまま載せました。ブログ自体の評判が良かったのと、"君"が好きであるというどうしようもなさが、この本全体に利くこと、あとは単純に本に残したかった(笑)。満足。

 


短歌の話

 全てツイート済みのもので、書き下ろしはありません。ちなみに今後2冊目を出すか分からなかったので、今まで詠んだものはほとんど載せるくらいのつもりで作りました。


・短歌の推敲

 自分が詠んだクソ短歌は後述の並び替え段階で落としたので、採用した短歌はツイート時点のものをそのまま載せるつもりでしたが、『天才による凡人のための短歌教室』を偶然本屋で発見してしまい…内容は歌人になりたい人宛ての短歌入門本なんですけど、内容が最高で。最高すぎて。自分の短歌もこのままじゃいけないということで、直すことにしました。直せなくてこの段階でまた落とした短歌もあります。


例えば(×がツイートした推敲前、〇が本に載せた推敲後)

× 「目の前に君がいるから反射する」 見つめ合うとは見つめられてる

〇 君は月 愛を反射してしまう 見つめ合うとは見つめられてる

月のイメージで詠んだけど、"月"というワードがないと"反射"が利かないな~とか。

 

× 「ああどうかお許しくださいこの愛を」今のはあなたに言っていない

〇 「ああどうかお許しくださいこの愛を」おまえに言ったわけじゃないから

「あなた」を「お前」に。キレてるね!推敲後のほうが口に出したとき気持ちいい。


そのほか細かい直しのほうが多い。てにをはであったり、

× ありふれた歌を聞いてる ありふれた記憶に名前をつけるために

〇 ありふれた歌を聞いてる ありふれた記憶に香りをつけるために

たぶん歌を聞いても名前はつかない。であればこの記憶を彷彿とさせるようなせるような、呼び水のような何か…香りかな…という。いやこれ"呼び水"を直接使ったほうが良かったか?

………みたいなことをやってました。全体完成したあとぐらいに。

 


・短歌の並び替え

 今まで詠んだ短歌をすべて書き出し、イメージが似てる短歌をまとめました。

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頭が悪い同じ短歌を誤って入れるのが怖かったんだけど、頭が悪い。絶対もっといい方法がある。どうにもできないようなクソ短歌はこの時点で落としました。題詠や連歌も入れると量が増えてく一方なので基本落としてます。

それぞれ10~15首程度に分け、実際本に載る想定で並び替えたり、章で同じテーマの短歌のみにならないように似ている短歌はほかの章と交換してみたり…感覚です。

 ちなみに私は思春期にジャニーズにハマり、離れ、別のグループにまたハマって戻ってきたという経緯があるので、おしまいテーマの「愛の訃報」は3章目という早いほうに入れてみた。愛は死んでから本番。次の章である「どこまでいってもグレーだったら」はわりと暗い短歌を並べました。楽しい。

 

 

・短歌のデザイン

 基本的に1ページに2~3首を配置するのみ。たまに高さをばらばらにするとか、1首の行間をわざと空けてみたり。これも感覚です。

 分かりやすい例外であり、好評だったのが【検索】短歌ですね。

 ↓

f:id:whynot4696:20210420172442j:image

ツイートしたときからイメージがあったので、本にするタイミングでこの形にしました。やっとできた!嬉しい!

 

逆に今回は諸事情で断念したイメージはこれですね。供養。

f:id:whynot4696:20210420172503p:image

 


入稿~発送

 BOOTHのサービスを利用して通販のみで頒布しました。そろそろ入稿しなきゃな…と年末くらいに思い、詰めていったら出来上がってた。

 本の到着~自分で発送らへんはアドレナリン全開になった。「こんな本で本当に喜んでもらえるのか!?」「部数のことはマジで分からん!」「クソ虫でごめん…」みたいな感情がミキサーになってた。感想もらってもしばらく正気じゃいられなかった。2カ月たった今やっと冷静になったかな…

 

 

 

以上です! 

本づくり楽しかった~!知らないこと、考えたことがなかったものが多かったので世界の解像度が上がった。次回は箔押し前提のデザインしてみたいな…予算と相談だけど… ほかにも本当に「本」じゃなきゃダメなのかな?とも思いました。生活のどこに短歌があったら面白いかな?シールかな?冷蔵庫マグネットかな?ポストカードもありだな etc...

またアイドル短歌で面白いことができたらいいな~!!!

 

 

 

後編はこちら

 

whynot4696.hatenablog.com

 

 

 

 

『朝彦と夜彦1987』 2020年、冬より

朝彦と夜彦1987 2020年冬公演感想
Aチーム 佐伯大地・稲垣成弥
Bチーム 吉村駿作・菊池修司
Cチーム 滝澤諒・織部典成

 

 

 

 

まえがき

『朝彦と夜彦 1987』を冬にやるという発表を聞いた時は震えた。その手があったか!!と叫びたくもなった。この舞台は2人の登場人物が2つの季節を行き来する。ほとんどは夏だが、物語は冬から始まり冬で終わる。「今日は12月、クリスマスの少し手前」と言われて鳥肌を立たせながら、「良かった」と思って泣くチームがあった。死の冷たさに沈むしかないチームもありました。

今回、初日の公演は中止になった。公演前にスタッフが一名発熱し、全員PCR検査を実施、陰性は確認されたが安全を第一に考え、初日のみ中止となった。本当に発熱を申し立てたスタッフさん、検査を行いその中でどうするか調整をしてくれた人達には感謝したい。2020年12月に演劇を行うということは、それほど慎重にならざるを得なかった(ということを、いつかこの文章を読む人のために書いておく)

ストーリーについての感想は、過去大体書いてしまったので、今回もチーム別感想を。ただ2020年版はト書きセリフ(と勝手に呼びます)が追加されていた。「「十七歳のふたり」」や「窓から入ってきたのは17歳の夜彦」などなど。それまでは声色と雰囲気、SEだけで年齢や季節の行き来を伝えていた。伝わっていたからすごかった。前回までの演出も好きだったけど、言うことで時間や場面が鮮明になり初見に優しい仕様になっていた。Happy!

 

 

Bチーム感想―――『君を救いたい』

私はテニミュが好きで、特にここ数年、舞台は8割以上はテニミュしか見ていないような状態なので、テニミュに出演してる俳優くらいしかよく分からない。ので、今回Bチームで知っているのは吉村駿作さんだけだった。桃城が好きで、かつ前回朝彦と夜彦を見てくれた友人に吉村さんが出ることを伝えると「絶対朝彦じゃん!」と言った。そのとおり、朝彦だった。今回、結果的に2020年版の初日になったふたりだったが、私はとてもそれが良かった。もちろん、本来公演できた順番でできたほうが何倍も良いことだが、ずっと「見たい」と祈っていたような、朝と夜がやってきた気がする。
吉村朝彦は、背筋の伸びたいいやつだった。中学では生徒会長やったけど高校ではみんながあんまりやりたがらない委員会に入ってしまって、でもおそらくなんだかんだ仕事はサボったりしない。同級生にも先生にもいろんなことを頼まれ、嫌な顔できないような朝彦。遅れをとってしまうような人間を放っておけない、例えば老人が駅で右往左往してたら声をかけてしまうような、そういう朝彦だった。そりゃ宅急便屋の親父にキレたときはみんな驚いただろうな。菊池夜彦は、怯える子供だった。父親に愛されたかったのに遺されていった、どうしてどうしてと疑問を抱え、育ってしまった子供。悲しそうで、可哀想で、我儘で、あと実は可愛い。この夜彦は可愛い。幼さを滲ませるだからだろうか。

朝彦は、最初からなんだか夜彦が愛おしそうだったし、夜彦もまた、彼に強い憧れを抱いていた。見終わったあと「愛し合っていたな」という感想を抱いた。夜彦は、もし俺があの父親の子供ではなかったらという眼差しを朝彦に向ける。憎しみひとつない無邪気で憧れの眼差し。自分の話をよくよく耳を傾ける朝彦を、夜彦は恨むことができない。今回はト書セリフが追加されたが、Bチームは朝彦の記憶をたどる旅を、夜彦が導いてくれてるような気分になった。どのシーンだったろう、朝彦の気分が滅入ったあと、夜彦がト書セリフ「十七歳のふたり!」と叫んだ。子供みたいに、ねえ、パパそんな顔しないでよとでも言うかのように。その夜彦は幻想なのだが、幻想が現実と乖離してるとは限らない。朝彦が作った夜彦が、夜彦らしくないとは限らない。

死の話から、父の記憶、幼いころから今までの記憶が溢れてく夜彦は可哀想だった。記憶がどんどんと曖昧になる。吉村くんが演じた音楽教師は、1ミリも悪意がなかった。「やばいやつ」とかじゃなくて、どこまでも善意で、できることをしようと思ってやっている。(問題は相手を見ていないことだ。どんな少年もそれで救われると思うのは乱暴すぎる)

 

どんどんと鬱になって、眠れないでいる夜彦を朝彦は非常に辛そうに眺めた。「なにか」という教師の言葉を飲み込んでしまい、あるいは夜彦はすでにもう「なにか」になってしまい、朝彦は必死だった。(30歳の)今なら、病院に行けと言えたと語る朝彦の後悔の色は強すぎる。本当に本当に辛そうに、ノルアドレナリンセロトニンが出る薬について語る。

(ここからはいよいよ私の二次創作だが)17から30になるうちの、いつかの勉強でそれを知った朝彦の感情はどんなものだったんだろう。なんだ、そんな薬があるのか。俺が知っていれば、あいつに飲ませれば、楽になれたのだろうか。それを知った朝彦はどれだけ夜彦のことを思い出したんだろう。と思うと泣けた。 どうにかしてやれたかもしれない、でもどうすることもできなかった。Bチームは朝彦を見てるとどんどんと涙が溢れてきた。夜彦を、傷ついた子供をどうにかしたくて、朝彦は必死になる。してやれることを探す。可哀想だからじゃなくて、傲慢だからじゃなくて、「なにか」が大切でたまらないからだ。愛しているからだ。これ以上苦しまないでほしいからだ。

 

 

私はこのチームにグッドエンドを、つまり誰も死んでないというエンドを疑うことが出来ない。なぜだろう。「今日は12月、クリスマスの少し手前。夜彦の30歳の誕生日だ」と言われた瞬間、生きていて良かったと思わずにはいられないようなふたりだった。最後の独白は生きている夜彦に投げかける、30歳の朝彦に見える。17歳を救ってやりたいと思う、思い続けて教師になれた朝彦だった。

 

 

 

Aチーム感想―――『せかいでいちばん怖い病』

稲垣成弥の怪演。
成弥さんは夜彦っぽいなと思ったし、絶対怖いタイプの夜彦だとも思った。このチームであらかじめ知っていたのは稲垣成弥と、2人が30歳で、知り合いであるということだ。

登場した瞬間、朝彦も夜彦もデカくて驚いた。経験が十分に刻まれた顔はシリアスを香らせる。「サスペンス始まる???」と思った。ふたりを取り巻く空気は異常に重たい。身体がデカいからか、マグマみたいな強いエネルギーが渦巻いてその正体が見えない。深くて、暗い。

佐伯朝彦は「普通にいいやつ」だった。妙に品が良くて育ちも良さそう。細かいことは分からんが頼まれたことはしっかりとこなす。気が弱いから政治家にはなれないが、しっかり教頭くらいにはなるだろう。30歳では子供っぽさもある。ちょっとわがままな朝彦。確かにおまえには気の強い女がいい。
稲垣夜彦。今回の戦犯。恐ろしいほどのエネルギーを見えてくれた。演じがいがあるのは夜彦だと、過去に脚本の菅野彰さんも一度言っていたが、その「演じがい」を余すことなく食べ尽くしたのが稲垣成弥だった。こいつが談判にきたら泣いて逃げる。死にこれ以上ないほど怯え、自分が持つ病に苦しめられた。内側にも外側にも狂気がいる。

 

(若干乱暴な表現ではあるが)男が考える、男同士の関係性みたいな印象を抱いた。序盤ウェットなものがない。朝彦は「仕方ねえなあ」と面倒を見る。夜彦はおニャン子クラブにセーラー服を着て出ようかと男子校でゲラゲラと笑っている。男臭い。ふたりが理解しあおうとしている印象は抱かない。

初めから幻想夜彦は健やかだったこと、思い出の夜彦とまったく違ったことは驚いた。朝彦がそう望んだのが分かる。それくらい彼が患った病は重い。思い出の夜彦はもっと暗く、怖い。幻想は元気で、どちらかと言えば躁に近い。だから見てられなかった。夜彦が怖い。

なんであのときだけ約束を破った? 死にたいと思ったら30まで生きられない。死にたいを健やかに言うな。

 

「嘘をつくな」

 

 

さて、では佐伯朝彦はどうだったか。”追い詰められない”のだ。いや、十分追い詰められているんだけど、「鈍感」なのだ、ちゃんと。この朝彦とは死の恐怖が、夜と朝の恐怖が分からない。このあとまた詳しく書くが、朝彦は17歳の夜彦を患ってしまっているにもかかわらず、どうにも無自覚なのだ。

だから稲垣夜彦は何度も「再演」をする。そんな、亡霊夜彦の物語であるように感じてしまう。亡霊はよく言って聞かせる「何故、来なかった?」

 

 

*朝の一番眩しい時間と、夜の一番深い時間
稲垣夜彦の演技は印象に残るものが本当に多かった。(これを「演技」と括るのは間違いかもしれないが)もう一生忘れられないと思ったのは千秋楽、「小さな木の実」を聞いて、あいつらみんな死ねと叫ぶ勢いで台本を落とした。アクシデントか演出かは分からない。そしてこのあとのシーンは夜彦が自分の記憶のふたを開け、語りが止まらなくなるシーンでもある。2つ上の嫌な上級生、父の死、両親の言葉、小さな汚い灯油のにおいのする倉庫。そして彼女との件まで、台本を拾わなかった。拾えなかったのか、拾わなかったのかは分からないけど、一切その素振りを見せなかった。

もっと細かいことで言えば、ヘアヌード写真集と陰毛のシーン。化学準備室に寝そべり会話をする夜彦。朝彦の「毛なんか絨毯にもシーツにも落ちているのにな」でうわっと気づき服についたほこりを手で払う。神経質、潔癖。
稲垣夜彦は「その父親を止めらなかった子供が僕でーす!」といやに明るく言う。嘘がむなしい。空っぽになっていく。痛々しくなっていく。もうどうすることもできないほど。

二十日鼠と人間」を読んだ夜彦が、「自分で引き金を引くやつのほうがいいやつだ!」と朝彦に語るシーンがある。あの稲垣夜彦、奇妙に明るくて嫌なんですよね。嘘っぽいというより幻想っぽくて。朝彦が自分がしたことを正当化するために作りだした記憶のように思える。

 

朝彦に死にたい朝を遺したりしないか? と問うたあと「良かったなあ、この子供たちはきっと健やかになる」とこれ以上ないほどうれしそうに言う夜彦…このまま終われば、赦しのシーンだったと思う。

しかし夜彦は言う。「それが聞きたかったんだろう?」「みんな健やかになる。俺もそれを望んでいるよ…」まるで呪いをかけるように、温度のない声でゆっくり、たっぷり含みを持たせ、17歳の夜彦は窓へ去る。

 

*最後の声
Aチームの千秋楽、拍手のあとに抑えようにも抑えきれないといった人の声がした。「ねえ、最後!」「絶対死んでるよね!?」わっっっっっっっっっっかる………と思いながら黙って代わりにTwitterで騒ぎました。
この舞台は校舎の外(にいると思われる)夜彦が「何やってんだ、朝彦。早く来いって」というセリフで終わる。Aチームの千秋楽、その声の主が分からなかったのだ。30歳にしては幼すぎる。夜彦にしては健やかすぎる、子供のような声…。
なんだったんだあれは、と思った観劇から一週間たち、このブログを書いている今日、するすると解釈がつながっていった。

夜彦という亡霊は3番目の子になろうとしているのだろうか。佐伯朝彦と夜彦の父親が重なる瞬間がある。「みんな健やかになる。俺もそれを望んでいるよ…」とああいうふうに言った意図はそういうことだろうか。夜彦はムーの内容を「生まれ変わりがどうとか」と指摘していたのはそういうことだろうか。夜彦はただの朝をたくさん迎える子になるのだろうか。

………と言い切るには、はっきり言って点と点を繋げすぎている。解釈は拾って集めてこちらが勝手にするひとり遊びだとしても、さすがに思い違いのような気もする。どうなんだろう。どうだったんだろう。

 

 ただ、おそらく朝彦は生きていく。無意識に、正しく死に理解のない朝彦は子供に死にたい朝を遺さないことを選んでいく。亡霊に付き纏われようとも。

 

 

 

Cチーム感想―――『ふたりが出会う』

夜が深すぎるAチーム。夜を救いたいと願うBチーム。それぞれを見れたおかげで、Cに対して肩の力は完全に抜けていた。もう十分いいものを見せてもらったなあという心持ちでいた。(去年も後半のチームに同様のことを思った。最初のチームのほうがやはり緊張する…)
今回のチームの中で一番若い座組であるということは公式のツイートで観劇前に知った。去年の織部くんの朝彦役を知っている。(余談だが織部典成ってものすごく夜彦っぽい名前だな~と去年から感じていた。たぶん「織姫と彦星」のイメージからだろう、夜の星っぽい)
織部朝彦は好青年で、いかにも「朝彦」であったと記憶している。

 

この舞台はまず演者2人が登場し、夜彦役がタイトル、(元は)ト書きである描写を語る。それに応じるように朝彦が椅子につく。その登場シーンでふたりが並んだ瞬間「なんだこの夜彦っぽい朝彦と朝彦っぽい夜彦は!」と思った。遠くをにらみ、ポッケに手を突っ込んでいる明るい金髪の男は白い服を着て、端正な顔の背筋が伸びた黒髪の男は黒い服を着ている。「え!?知らない…!」と胸が躍った。
次に「なんだこの小器用な男は!」と滝澤朝彦に思った。冒頭の、夜彦が美術教師に談判に行ったのを朝彦が再現するシーン。夜彦は絵が下手で、カエルを描けと言われたらとにかく気持ちの悪いカエルを、ネズミを描けと言われたらとにかく気持ちの悪いネズミを描く。戯曲どおりに上演されているならば、紙に描かれたカエルとネズミがいるはずだった。しかし中屋敷さんが演出する朗読劇には小道具がほとんどなく、2人が持つ出席簿を模した脚本、ステージ上には教員用の椅子が舞台上に置いてあるだけだ。

先生、俺がこんな!(カエルを見せる)カエルを描いたり、こんな!!(ネズミ)を描いたりするのは障害の一種です。

2つ目のこんな、つまりネズミは言葉としては省略されている。滝澤朝彦はこの2つ目の「こんな!!」を、自分が見せた(実際にはない、パントマイムで)紙を見て、描かれているのがとてもネズミとは言えないから「ネズミ」という言葉を飲み込み、「…を描いたりするのは障害の一種です」というセリフへつなげた。本に書かれていることを、一瞬の演技で伝えた。本当に、非常に細かい話だ。別にそこまでする必要はないと思うが、彼はその本当に非常に細かいことをした。

 

何度かは思った。こいつはもしかしたらキ〇ガイというやつだ。普段出版倫理や放送倫理の中にあると使えなくなる言葉を人は舞台上でやたらと使うが、舞台の上には倫理がなくてもいいという話なのか? ……まあ、倫理はいいが、思いやりは大事だ。

このセリフは数年前「朝彦と夜彦1987」を初めて見たときから好きだった。急に舞台を皮肉り、朝彦役が第四の壁を越える。滝澤朝彦は脚本を指でなぞり、「キ〇ガイ」という言葉を見つける仕草をしたあと読み上げる。それから顔を上げ、「普段出版倫理や…」という続けた。このセリフの意図を完全に汲み取った振る舞いをする。すごい。何者だよ、マジで。

 

前半、2人の掛け合いは念入りに軽快だ。(脚本が元からそうなのもあるが)ちゃんと笑えたし、間もとてもうまい。2人とも影やこの物語の暗さを感じさせない。
この2人には互いに友達らしい友達もいないというが、つるむ仲間はいたと思う。でもちゃんといろいろ話すような友人が互いしかいなかった(朝彦は外面が良く、夜彦は躁状態しか見せていないとか)(クラスで話すだけの仲視点で二次創作が描きたいと初めて思った)(青春というか、リアルだから校舎の香りがする)

織部夜彦は自分のことも含め無知だ。いつもだるそうで、勉強はできるのに分からないことが多い。記憶が混ざり合い、なぜ自分がこんなに苦しいのか分かっていない。だから朝彦と話すうちに自分の中から、あるいは朝彦から自分を知る。「お前を見ていると、みんなが俺じゃないと知る」。朝彦が「当たり前だ」と言うと「当たり前だな」と驚きながら言う。繊細に、自分の中にあるヒビを埋めていく。
17歳の滝澤朝彦は無知というか、「井の中の蛙」という印象を受けた。「休んだところのノートを見せるから、そしたらそんなに悲観しなくても、まだ1年の1学期だし」とちょっとどうでも良さそうに言ったり、自分は所詮リアリストと言い、小さな未来をやはり投げやりに言う。そのくせ自分が2年生になったら成績が落ちたと嘆くし、小さな未来を語れない絶望にはひるむ。

17歳のふたりは、見てる側と同じくらいこのあとを知らない。だから夜彦の告白が大きく重く聞こえて、朝彦も相応に驚く。ひとつひとつのセリフに意味があって、“聞く側”がちゃんと聞いて飲み込み、ふたりは毎回“出会う”。
千秋楽後、滝澤さんがLINEライブをやっていて(体力すごいな…)思わず見てしまったんですけど、「同じ演技はなかった」といったことを言っていた。(意訳ですが)「夜彦の発言の受け止め方、夜彦がこういうニュアンスできたら、その時々で演技が変わる。1つ1つパズルの組み合わせが毎回違うから、ゴールが変わることもある」と。聞いててひっくり返っちゃった。見たからこそ分かる説得力があった。
互いの言葉をよく聞いている2人だった。話すうち、夜彦はだんだん記憶のふたが開き、初めて父のことを話す。理由を見つけ、全部がつながっていく。朝彦は彼が抱えた悲劇を1ミリも予想していなかっただろうから、とても苦しそうだった。「…もう聞けない」と言う。聞けないこともできない、聞くことしかできない。自分の手には負えない。朝彦は言う、「分かったよ」。夜彦は「分かったって何が」と返す。戸惑い、間をため、「どっちかに付き合おう」「生きるのか、生きるのを、やめるのか」「俺も一緒に死ぬよ」このあともいくつかのセリフが続くが、朝彦は1つ1つをゆっくり紡ぐ。何を言うべきか、夜彦を見ながら自分の中を探って、本当に夜彦が死にたいのか図りかねながら、朝彦は約束を言う。夜彦は喜び受ける。受けたことに戸惑う。十七歳が、いる。

三十歳のふたりは面白かった。朝彦は神経質で口うるさい。夜彦は健やかそうに見える。ふたりが反転したというより「2人が2人の荷物を分けた」ように見えた。朝彦は小さなことで気に病むけど死病には至らない。夜彦は朝を朝と思わなくとも、それに近い光は感じるだろう。冒頭抱いた「夜彦っぽい朝彦と朝彦っぽい夜彦」がそのまま存在する。始まりに戻る綺麗な物語を見たような感情。

 

 

*3つの解釈

 

 

 

この作品の結末は大きく分けて3つ、考えられる。夜彦は生きているのか? 朝彦は生きていくのか? 私は見たいように物語を見ることしかできないし、分かることしか解釈できない。一度目は夜彦も朝彦も飛んでしまいそうだったし、二度目はふたりとも生きているようにも感じた。このチームに限らず役者の解釈は分からない。

でも生きていてほしいと思う。青春だった、ふたりで必死になった、約束だった。窓へ去っていった17歳の夜彦は30歳の朝彦を優しく大切に許した。それは幻想夜彦のはずなんだけど、幻想は現実と乖離しすぎることができないと、ないものを描くのは難しいと考えている。それくらい幻想も現実も、夜彦は大切そうに朝彦を見つめていた。
なにか、とは何か? と朝彦が想うこと。「なにか」ではあった。そうなれるふたりだった。

 

 

 

*遠ざかる十七歳
AチームとBチームと同じように、Cチームを本当に見れてよかった。それはどんどん私から遠ざかっていく十七歳に、また触れることができたからだ。
十七歳は、そうだった。年を重ね「分かることが増えた」と思うのに、機微を忘れてく自分がいた。十七歳は無垢なわけではなく知らないことが多いだけで、無邪気なわけでなく多感で達観しているようなところもある。Cチームのふたりは、ちゃんと大人を、こんなふうに忘れてばかりいる私を、足蹴にしてくれるだろう。大人って何も分かってないし、医者なんて死んでも嫌だ。もがき、知って、生きるを重ねる、いのち。
そういう鮮やかなものに物語を通して触れることができて、うれしかった。

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

*役者に圧倒された2020年

今まで、この物語の解釈や演じ方というのは、年齢は強く影響するだろうと思っていた。もちろんそういう側面はあるだろうとも思う。今回は別のことを考えた。Bチームの吉村朝彦を見て(大して役者に詳しいわけでもないのに)パーソナリティーは大きくかかわっているのではないか?と思った。それほど朝彦が必死に手を伸ばしていた。

 

*朝彦を救いたい

朝彦と夜彦の公演を終えた、演出家の中屋敷さんがツイキャスにて「初演は夜彦を、前回はふたりを、今回は朝彦を救ってやりたいと思った」と語っていた。納得感と驚きがいっぺんにきて、変な気持ちになる。『朝彦を救ってやりたい』。確かに朝彦も救われるべきだ。2人しかいないから対比で見てしまいそうになるけど、そうなのだ。朝彦も必死で、傷ついてて、囚われてて、救ってやりたいと思う。

 


*いつかまた夜になる

今回、見に行った友人が「人は誰しも朝彦的な側面と夜彦的側面を持っている。どちらの気持ちもよく分かった」という感想をくれた。一方私は前回の公演で、「自分が朝彦に近づいてゆく」という感想を抱いた。今もどんどん強くなっていく。健やかになっているという部分もある。昔は無意識に、自死とかそういう願望というのは、若い人間のものだと思っていた。そんなわけはないのに、そう思っていた。

だから、この感情は、傷は大人に分からないそれなのではないか?と。それで、どんどん歳を重ねる中で、幼い時の「それ」と大人の「それ」は鋭さが違うとは思う。でも結局「それ」はある日突然なくなったりはしない。

2020年のふたりを観て、「私はまたいつか夜になるかもな」という予感を覚えた。わけない不安を一度克服したとて、それがまたやってこないなんてことはない。人生はながい。朝と夜を繰り返して、生きていくのかもしれない。よっぽどそのほうが救われるような気がする。予感。でも自死は許せたりしない。

…例えば夜彦の父の死が、夜彦の一部を壊し、殺していったように。死というのは関わった人間の一部を奪う(亡くす、失うという言葉のほうが正しいかもしれない)行為であるというふうに考えることにして、自死は許せないということにして、生きている。同時につきまとう虚しさも感じるようになった。死にたい人間に私はこう考えると、許せないと、言えるか? じゃあどんなふうに、死なないでくれと言えばいいんだろうか。

―――そういうことを、いろんな朝彦に教えてもらっている。言葉だけじゃない何かを、いつも教えてもらう。私が朝彦が好きな理由は、夜彦に感情移入することと同じだ。

 

 

 

朝はくる。夜もきっときてしまう。でも、その先にはまた朝がある。
繰り返しながら、生きていきたい。

2020年、6人の朝彦と夜彦に出会えて良かった。
どうか健やかに、おやすみなさい。

 

揺らがないこと/揺れること

 

お気持ち表明という言葉が嫌いだ。
この言葉で感情を揶揄する行為が嫌だったし、謙遜に使うのも違うのではないか。そもそも自分の感情を揶揄したりするなよとも思う。感情はひとりだけで抱くことを許された不可侵の部分で、言葉にする責任は、自分や誰かの傷を癒す。

新型コロナウイルスでエンタメ業界が影響を受けて、もしくはそれがドミノを倒すきっかけになって日々状況が変わる中、自分の今の気持ち---いつか忘れてく一瞬のような---を綴っておきたいというのは、ずっとあった。しかしそれはやっぱり「お気持ち表明」とするしかないような粗末なものなのではないだろうか。今、私が人に見せられる気持ちってなんだろうな、と思っていたら、気付けば8月が終わろうとしている。

 

最近のトピックスにはどうしても、好きなグループからメンバーが抜けたというものがある。あの時、今後自分はこうなるだろうと思ったことはだいたい予想どおりだった。
手越くんの活動は今までと変わり積極的に追わなくなった。ただ情報をシャットダウンするほどのことではなく、アクセスしやすいものは時折見る。そして自担の番組やラジオは追って、自担じゃなくてもNEWSのメンバーが出ている番組は追ってしまう。…この行為の境目は一体どこにあるんだろう?

うっかりで、あるいは興味がなくて見逃すものもある。〇〇をしなければファンではないといったような言葉はもう古いような気がするし、あるいは、愛は行動で証明できると信じている人間のために存在してるようにも思う。
好きだと思う気持ちや、自分がファンだと思える気持ちは、私の中に確かに存在している。他者に証明する必要がないほど私の中にNEWSがいる。

 

 

 

だから、私は揺らがないことにした。

悪意ある言葉に流されないように。バラエティーに踊らされないように。ジタバタして溺れてしまわないように力を抜くことにした。
傷つけられないように心を柔らかくしすぎない。でも攻撃的になってしまわないように心を硬くしすぎない。

 

少し前に「枠とピース」についての話をTwitterでした。
以前からジャニーズグループに感じてた概念なのだが、グループが枠で、メンバーはピースだとする。デビューしたてのときは枠もピースも輪郭が曖昧だ。
ピース(メンバー)はその曖昧な枠の中で相対的に形を作ってく。他のメンバーとキャラクターが分かれるように得意分野を分けていったり、その場所での立ち位置を段々と明確にして、ひとつだけの形になる。それと同じくらい時間をかけてグループという枠の形も決まっていく。それは本人や環境、あるいはファンが見出し、グループの強みや色がだんだんと濃くなる。

そういう中で誰かがいなくなると、枠からひとつピースが消えてしまった状態だから、どうやってもいない人に気づいてしまうし、それが気になってしまう。
だからまた長い時間をかけて枠の形を変化させ、ピースも相対的に変化していく。「空いてる」と思った場所には、ゆっくり「いる人」が流れ込んでゆく。地形が変化してゆくように、新しい枠と新しいピースが出来上がっていく。

 

くるべきときは、いつかくる。

 

 

 

***

 

そうやって自分のスタンスを決め決意のようなものをしたのだが、仕事が上手くいかなくなりそっちで精神がやられてしまって、いろいろとそれどころではなくなってしまった。そもそも精神が健康じゃなければエンタメを楽しめなくなるのは経験上知っていて精神の世話をすることでいっぱいいっぱいになった。揺らがないとか強いことを言いながら、結局別方向の自分の情けなさに直面してしまい、ままならなさに憂鬱になる。頑張るってなんなのだろう。想像できる選択肢の中から選ばなければいけないのに、何を選ぶべきかすら分からない。当事者である自分が一番問題を知ってるはずなのに、不安のせいでとにかく全部が怖くなる…とめちゃくちゃネガティブモードに入ったのでとりあえず積極的に凹みまくって、最近なんとか調子を取り戻したところです。

 

 

とある若手俳優に応援してる友人は、あるとき「彼を応援しはじめてから、なんとなく情けない姿を見せたくないって思うようになって、いろんなことを頑張るようになった」と言った。頑張っている人をできるだけ胸を張れる自分で応援したいと思ってしまう、とのことだった。

 

 

***

 

 

と、まあ、結局一番言いたかったのは「揺らがないことにした」ということで、それでも揺らぐことは別角度からくるときはくるし、自分の世話は自分で見たり他者に頼ったりしながら頑張っている。そういったことをしたためていたら、昨日NEWSが新曲を歌った。

「カナリヤ」

24時間テレビでNEWSが歌うことを当日の午前に知り、直前に「新しい曲」とさらっと言い、完全新曲なのか未音源化の曲なのか、はたまた三人では初披露という意味なのか…と思ったらナチュラルに本当に完全新曲を歌った。

飛び方を忘れた鳥が、空を見上げて何かを待っている。理想を掲げ、傷を背負っていくカナリヤは「大丈夫」と歌っている…
歌詞は、NEWSサッカーテーマソングのBLUE・SPIRIT・SUPERSTARを彷彿させ、その流れを汲んでいるように思う。(しかし現時点で作詞作曲は発表されていない)

 

NEWSの状況と、そして自分の状況とリンクして私の中はゆっくり大きなものでかき回される。
歌われる情景が、零れる感情が、幾つもの過去が落ちてきて、波紋のように揺れてゆく。

好きだ、と思う。

 

 

 


今、私を取り巻く事実を、あるいはそれにまつわることを、誰かが---空想上の敵が---不幸と称そうとする。
予想していた状況と抱くだろうと思った感情が、何度かそのとおりやってきた。こんなに強い感情であったことは予想外だったけども。

幸福は幸福のまま、寂しいものは寂しいまま、好きなものは好きなまま、変に揺らがしたりしない。
心の波を揺らすのは、好きと想うときでありたい。そういう自分になりたい。

 

 

 

STORY still continues

 

リアルタイムで応援している自担グループからメンバーが抜けるという経験は初めてだったけど、ふわっとシミュレーションをすることはあった。ていうか年齢が35歳前後ともなれば、グループから一人くらいは抜けたいと思う人間が出てくるのは自然なことだと思う。ジャニーズしか知らない人間が、ジャニーズ以外の場所に憧れを抱いたり、あるいはジャニーズでいつづけることへの不安というのは、想像に容易い。別に「ジャニーズ」じゃなくても適用できる。今までとは違う場所、違う会社、違う相手…なんでも。

実際、ここ数年はジャニーズ事務所をやめた人は多かった。「ここ数年多かった」というか、そういう年齢にみんななっていたんだなと思う。それが自分の好きなグループにだけは起こらないなんて楽観はできなかった。他のグループで、そういったことが起こったとき一番最初に思うことは「良かった」だった。ああ、良かった。私の好きなグループではなかった。良かった、「こっちはまだ大丈夫だ」…最悪だな。それくらい、遠いことではなかった。

それで、シミュレーションは何度もするんだけど、グループから誰かが抜ける可能性は考えられても、「その後」を想像することはできなかった。そのときどういう気持ちになるかも分からなかった。

 

6/19は有休をとっていた。NEWSのライブ配信を見たあとは情緒が乱れそうだったし、どうせならたんまり残っている有休を消化しようと。いつも何故か受信するのが遅いメールアプリが、そのときばかりはしっかり鳴った。いつもならこまめにメールをチェックしないのにその日はなんとなく目に入って、「メンバーより、NEWSファンクラブ会員の皆さまに大切なお知らせがございます。」と見えて、ああ、と思った。
冒頭の小山さんの言葉が、すごくゆっくり聞こえて、そのまま文字に起こされて、絶対その先は「手越祐也が」に続いているとしか思えないのに、聞くまで信じられなかった。

手越くんが事務所を退所することを聞いて、あーーーーこんな感じか、が最初に思ったことだった。メンバーが抜けるって、そのことに対する喪失感って、こんな感じなんだな。STORYと、その先もやる予定だったコンサートに手越祐也という人間はいなくて、今まで何ものにも代えがたかった「四人」の生の歌声は聴けなくなって、私が想像する未来にいてくれた人がいなくなるんだな。疑うことができなかった未来というものが、ぱっと霧に変わって残り香だけがするみたいな感覚を私は抱いた。

 


これはその瞬間の話だけど、前後にもっといろんなことがあったし、何かが起こるたびに違う感情や考えが出てきて一貫しなかった。今もまとまってない。数日経って、「でもSTORYはやってほしかった」という言葉はたくさん見たし、私も感情のほとんどがそれを占めていた。このタイミングで、STORYをやることなく、でもアルバムは出てて、ゲネプロ(本番と同じ形式でやるリハーサル)までやって、あとは本番をやるだけ、ってところで、このプロジェクトに欠かせない重要なひとりが抜けるって、夢を打ち砕くのに十分すぎる。STORYに、四部作に、時間と想いと愛が乗っかっていたのは間違いない。望んだ形で開演されることがないのは、本当に虚しい。

 

 


手越くんはその後、会見をした。報道と相違がある部分についての報告をかねてとのことだったけどあまり大きな相違があるとは思えなかった。それでも彼が言った小山慶一郎が、加藤シゲアキが、増田貴久が長い時間を共にした戦友であること、NEWSに、ジャニーズ事務所に感謝しているという話は聞けて良かったと思う。疑ったことなんかなかったけど、あらためて言われてほっとしてしまった。
手越くんが、本当はSTORYを終えてから退所しようと思ってたこと。その準備のために外出したということ。聞けば聞くほど新型コロナウイルスに対する考えの甘さが露呈した。結果、事務所にあらためて退所の話をするころには「弁護士を立ててほしい」と言われ、そこからはメンバーと連絡を取ることを禁止されたらしい。そして、今回の円満退所に至った―――その間が不明すぎるが、弁護士が入ったことにより、この部分は話せないことらしいということも分かった。


話せないこと、知ることが出来ないこと、疑問が返ってこない「アイドルとファン」という関係性ゆえ、私たちはいつだって自分で真実を持たなければいけないと思っている。だから今回の件について、私は私の目で見える範囲で持てた「真実」は「これは円満退所ではなかったのだろう」ということだ。もちろん、その内側で何が行われていたかは分からない。

同時に、手越くんがSTORYをやりたいという気持ちが本物だったということも私の中で事実だ。それが履行されない退所を円満と呼ぶことはできなかった。その気持ちが本物であると思えば思うほど、四人でやるSTORYが見たかった。
四部作、NEVERLAND・EPCOTIA・WORLDISTAのラスト作品。STORYのグッズで一番気にいってるのはバッグだった。過去三作のバッグと同じ布地とデザインを繋ぎ合わせている。あの三作を積み重ねて、今があるということ。それくらい大切で、重ねてきた時間の証。それを思うこと…つまり今回の件を悔しがることは許されたい。

 


手越くんがいなくなったという事実を受け入れることはできれど、それによってなくなった未来をまだしばらく…もしかしたらずっと…思うことになると思う。私がそういう人間だということをよく知っている。

NEWSのことが好きだと言うとき、冠に「手越くんのいる」という言葉を付けたことがあった。それだけ手越くんの知名度を信頼していた。手越くんが持ってきてくれたサッカー曲は重ねる毎に好きになっていった。最新作「SUPERSTAR」が抱く切なさと寂しさ、それでも進む強さが愛おしかった。あの歌声が好きだった。NEWSの幹とも思う歌の力強さ、努力に裏付けられた信頼が確かにあった。MCでとても大きい声で笑ってくれたこと。流行に疎すぎてみんなで驚いて、笑ったこと、どんな無茶ぶりにもオチをつけて応える頼もしさがあったこと。
前衛に居続けてくれる人だと思ったこと。
その分、傷つきやすい部分は一番内側に隠してしまう人のように思えたから、傷つけられて平気な人なんていないから、せめてファンがいる場所が一番優しい場所でありたかった。いや、この感情は後付けかなあ。都合が良すぎるかな。

 

 

手越祐也は、2020年6月19日をもって、NEWSを脱退した。
NEWSは3人でやっていくことになった。
"NEWS are made of four people"という文字を何度も見た身としては信じられない。それだけ(四人の)NEWSが何度も4を強調していた。前述したとおりいつか誰かが抜けたいと思うのはある意味自然だと思っていた私にとっては、少し怖いものにも聞こえた。どうしてそんな怖い言葉を繰り返すのだろうか。もしかしたら、これ以上誰かが辞めるのであれば、もうなくなってしまうグループなんじゃないか? そんなふうに思っていた。

それでも今終わるのは違うだろうと誰もが…少なくとも3人が思ってくれたから、NEWSは続く………これもしょせん私が勝手に持っている「事実」なんだけれども。

 

 

********
手越くんが活動自粛になってから退所までの期間にファン発信の企画が立ち上がって幾つかに参加した。そのうちのひとつに「NEWSに今、伝えたいことは?」という問いがあった。あのとき書いた「伝えたいこと」は、NEWSが3人になった今も変わらない。
未来がどうなるのかは、全然想像もつかない。それでも未来がいいものだというのは信じるに足ると思う。そう思う勇気はね、すでにNEWSからもらっているんだよ。

 

NEWSへ

「ここからいったい、どうやって頑張ればいいんだ」
そんなときにNEWSのライブに初めて行きました。
最後に歌った『U R not alone』で”一切引かないし一切負けない”と誓うしかなかったこと。
人生は頑張り続けるしかないんだということ。
転んだって立ち上がれるということ。

NEWSが教えてくれました。ありがとう。大好きです。

 

 

 

 

 

 

 

 


追伸、これからも良き旅でありますように。

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約束するよ

Johnny's World Happy LIVE
3日目。


始まるまでそんなに気構えず、たぶんなんでもないように始まってなんでもないように終わるんだろうなと思ってた。
でも、緊張はしていた。3人に対してどんな感情を抱くんだろう。心が揺れなかったらどうしよう。

 

1グループ目を見ながらさまざまな感情を思い出した。
NEWSと出会ってから、いろんなものが変わった。
今まで響かなかった歌詞が切なく胸に降ってくるようになった。
昔の私なら、歌番組みたいに各グループにセットを組んで魅せてくれたほうがいいと思っていただろうけど「コンサート」じゃなきゃ駄目になった。

会いたいと思う切実さが分かるようになった。アイドルがアイドルをしているという輝きを好く自分になった。

現場に行きたい。服を選んでグッズに並んで、ノイズが多いあの現場で大好きな人にだけ集中する時間が欲しい。言い訳が無駄になって、自分の感情が生々しく分かって心が揺れまくってしまう、劇薬のような現場に行きたい。

 

他のグループが羨ましくなることは、確かにある。例えば(前回も含めて)Johnny's World Happy LIVEならば、他グループのファンにコンサートを見せられるチャンスでもある。とびっきりの4人を見てほしかったなと思う。見せつけてみたかった。私が好きなグループって最高でしょう、ねえ、羨ましがってよ。
しかしそんなことに意味がないことも分かっていた。だってみんな自分が好きなものが一番じゃないか。どんなに羨ましくても、それが自分が好きなグループじゃなきゃ意味がない。逆に言えば、そんなものがなくたって、好きなものは好きなのだ。
そう考えると、私たちファンはいつだって「アイドルがアイドルをしている姿を見たい」という点についてはみんな一緒なんだなと、意味のない連想ゲームをしていた。

連想ゲームは続き、今度はいろんな友人の顔が浮かんだ。自担が結婚した友人、なかなか自担グループのCDが出ない友人、応援しているグループのメンバーが活動休止している友人。誰の悲しみにもうまく寄り添えることはできなかったし、想像でいろんな言葉を考えたって渦中にいる人間の想いのほうがいつだって鮮明だった。

 


NEWSの「クローバー」。歌うんだという驚きと同時に、え、最後の手越くんのパートはどうするんだろうと戸惑いまくった。
歌も物語も不思議だ。心の状態で、全然違ったふうに胸に届く。会いたいと思っていること、寂しいと思っていること、つらいと思っていること。そういう心が分かってしまう。

 

加藤さんのパート「どんな夜だって越えられるから We’ll be together 見上げた先に光はある with you forever」。
加藤さんはこの「We’ll be together」歌ってないんじゃないかという話を、前にしたことを急に思い出した。「ここ、我々のパートではないか?」と友人は言った。

果たして、加藤さんは「We’ll be together」を歌わなかった。でも「with you forever」は歌った。この話を友人としたとき、私はこう言った。
「何度考えても私の都合のいいものになってしまう」
「だって、これって加藤さんがいつも言う『ずっと』じゃないですか?」

 

もうひとつ、これは見かけたツイートなんだけど、「僕らの手を握っていて、そのぬくもりを忘れないで」という歌詞が『できることならスティードで』の祖父母の話と重ならないか、ということも思い出した。加藤シゲアキが、祖父の病室に行った日の出来事。いろんなことを忘れてしまった祖父は、それでも祖母のことは覚えていて、何度も何度も祖母の手を握った。これからまたいろんなことを忘れてしまっても、その温もりはずっと覚えているだろう…というエピソードだ。見たときはあんなにも心を乱されたのにすっかりずっと忘れていて、今日、加藤さんが歌っているのを見て久しぶりに思い出した。いや、やはりこちら側に都合の良い解釈すぎないかと思うんだけど、私はこのぬくもりを忘れないし、何百回だって、何万回だって約束できる。

 

閑話休題。手越くんのパートは誰も歌わなかった。そのせいで、一気に「いない人」が「いる」ことが分かった。なんでもないように…なんてとんでもない。この世界は、STORYというコンサートがなくなって、手越くんが芸能活動休止になって、3人で歌わなくちゃいけなくなった世界だった。もう過去はやり直せなくて、今できることをするしかない人がいた―――もう一人も見えるところにいないだけでいるのだ―――。


情緒が不安定、どころか情緒タコ殴りにあった。NEWSのコンサートがやっぱり世界で一番好きだ。周りが羨ましいとか、羨ましいとか思ってほしいなんて、やっぱりとてもどうでもいいことなんだと思う。だってどこからどう見ても世界で一番なんだもん。こんなに心を揺らす人たちはいない。NEWSがどうしたら一番よく魅せられるか考えていて知っていて、外野なんか全然見れない内向きな人たちだから好き。その不器用で泥臭くて、必死で立つ姿が大好き。

 

 

U R not alone。手越くんのパート。ほかの三人が歌わなかったあのパートも、私は歌おうと思った。手越くんのパートだからたぶん歌わなかった人のほうが多いのだろうけど、私は歌いたくなった。でも全然ね、無理だったね。あそこ泣いちゃって歌えなかった。私は歌えないし、ほかの3人も歌わないから、やっぱり手越くんに歌ってほしいな。

 

 

 

ずっとね、どうしたらいいんだろうって思うけどどうしようもない。何もできないとは思わないけど、手が届かない領域というのはどうしたってある。待つことしかできなくて、でも待つことならいくらだってできる。

 

それでも大切にしたいなということ。怖くても人生は続いていくこと。どんな勇気を抱けばいいかは、過去のNEWSから教えてもらっている。

臭い物に蓋をすることもせずに、あったことを抱きしめて歩く君たちが今日も好きだよ。どうか優しい未来が待っていますように。